写真のお品物は、この度いわの美術にお譲りいただいた京都の陶芸家五代目清風与平による香合です。
茶の湯の会で陶器の香合が用いられるのは炉の時期のみとされていますが、本品は手作りの温かみを感じるざっくりとしたフォルムに、まだらに変化する青磁の柔らかみ、力強くも手間をかけ丁寧に彫られた細かな細工で、小さいながらもお部屋の飾り物として十分な存在感を与えてくれます。
作者について
四代与平の長男として1921年に生まれた五代目清風与平は京焼・清水焼の陶工として数多くの優れたやきものを世に送り出しています。
清風家はそもそも江戸時代末期ごろに開業した京都・清水坂の陶家の名門でしたが、五代目が生まれた当初は経済的に苦しく、一時は家を手放し他の仕事に就くに至るまで生活が困窮していました。
こうしたなか、五代目与平は陶工として陽の目を見ずに青年期を過ごします。しかし、盆栽鉢作家の月之輪湧泉の作品に出合うことで、その造形と青磁釉の美しさに感銘を受け、自らも盆栽鉢を手がける作陶家として出直すことを決意します。
その後、与平は湧泉の鉢に絵付をした合作を遺すなど、生涯を通じて湧泉との親交を深めていくこととなります。
与平の手がけた盆栽鉢は好評を博し、さらには元来陶工の名家の生まれであったためにスポンサーにも恵まれ、与平は自らの工房の再建を果たします。こうしてそもそもの家業であった染付磁器作家としての立て直しを見事に成功させた与平と、自由な発想で生み出されたオリジナルな意匠が特徴的なその作品群は、今日でもなお多くの京焼作家の手本となっています。
香合 ~バラエティに富んだお道具~
元来は「香盒」と書きました。「盒」には、身と蓋を合わせる入れ物という意味があります。
盒子も今では合子と書き、したがって香合は、香を入れる蓋物の容器を指します。また、茶席での香合は、炭道具の一種に分類される茶事には欠かせない道具です。
その茶席において風炉と炉では、焚かれるお香が異なります。
5月から10月にかけての風炉の時期には伽羅や白檀などの香木が、11月から4月の炉の季節には粉末の香料を蜜などで練り合わせた練香が使われます。それに伴って、香合も風炉と炉で使い分けされ、風炉の季節には主に漆器や木地の香合、炉の季節には陶磁器の香合が用いられるほか、両用の物には蛤などを使った貝もの、砂張などの金ものなど、ひと括りに香合と言っても、その種類は豊富にあります。
江戸時代中期の宝暦7(1757)年に、江戸相撲が縦一枚刷りの相撲番付を発行してから「変わり番付」というものが大いに流行しました。全国の名所、特産物から、学者・武芸者、流行語の比較番付まで、あらゆるジャンルにわたり、百科事典的な一覧表の役割も果たしたそうです。
茶の湯の世界では、安政二(1855)年に二百数十種の香合をランク付けした「形物香合相撲」という番付が作られています。江戸・名古屋・京都・大阪・金沢の茶道具屋と、当時の茶道具の権威ある目利きによって作られた名物香合の番付表で、この背景からも、香合の多彩さ、多様さがうかがえるだけでなく、一般の茶人たちの香合への関心度が高かったことも物語っています。
いわの美術でのお買取り
堆朱・堆黒や螺鈿などの唐物のほか、蒔絵や鎌倉彫、また木地などの和物や、今回ご紹介した染付、青磁や南蛮、阿蘭陀(オランダ)ものなど、実に多彩な香合は、あらゆる茶道具のなかでも素材や意匠ともに最も多岐にわたるとされています。またこの事は、それだけ数多くのジャンルの作家によって作り出されてきたことを意味しています。
木工芸界からは重要無形文化財保持者の黒田辰秋や、彫漆の分野からは同じくその頂点を極めた音丸耕堂など、多数の名工による作品が遺されているほか、中国の骨董である大清康熙年製の陶磁器なども存在します。
もちろん、希少性が高ければ高いほど市場価値があり、お買取り額が期待できるところではございますが、多種多様であるがうえ、一般にはお品ものの見分けが複雑で難しくなるケースも多くございます。
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