本作品は、京都の象牙師として名を馳せた悦玉による象牙製の香筒です。筒型の作品全体で糸瓜(へちま)が表現され、蓋には果実のヘタ、胴部分には細かな巻きひげ状のツルと葉の細工がほどこしてあり、そのユニークなデザインが目を惹きます。
煎茶道とお香
抹茶の茶席でお香といえば、香木または練香が用いられますが、いずれも心身を清らかにし、室内の空気を浄化して、炭の臭気を消すためといわれています。
対して煎茶の場合、香木や練香は用いず、代わりに線香を用いますが、その場合も涼炉に入れて薫ずることはありません。
香筒または線香筒は、香立(香炉)、香盆(香台・香机)とともに床の飾り物として、三具の調和が茶席の雰囲気を左右する大事なお道具として重要視されています。
なかでも折れやすい線香を保護・保管する用途の香筒は、一般にはよく知られていない道具であるため、初めて見るかたには奇異に映ることもあるようです。香立や香盆の用途が一見して判るのに対し、香筒には山水が彫刻されていたり、詩文が刻まれていたり、細かな装飾がほどこされていて、目に新鮮な驚きをもたらしてくれます。
線香と煎茶の深い結びつきは、線香の形状やその特性が、中国絵画や漢詩などから風流を感じ取る、江戸時代に日本で大流行したいわゆる『文人趣味』に共通するものを持っていたことから広まったと考えられています。
例えば、武家出身で日蓮宗の僧侶となった深草元政(1623-1668)は漢詩集『草山集』のなかに次のように線香についての詩を残しています。
『清和濃やかなる時は尺還た短く 安禅倦む処は寸猶長し』
現代語にすると、「同じ一条の線香を焚くにも風流な話に興じているときは短く感じるが座禅に飽きたときには長く感じる」といったところでしょうか。
香立の上でくゆらせる線香は、時間の経過をハッキリと意識させることからも、自由な精神に富んだ詩人たちの気性にうったえる点が多かったのかも知れません。
さらに煎茶では、通仙・神仙など『仙』の字が好んで使われます。『仙』には特に優れた、卓越した、などの意味があり、世俗を超越した非凡的な生き方に強い憧れが示されていました。その点で線香は、仙香とも書かれるようになり共感をもって受け入れられました。
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