こちらの御品物は京都府にお住まいのお客様より
御買取りさせて頂きました。
こちらの銀瓶は名工、金谷五郎三郎が胴を作製。
蓋の摘み部分を刀装具における浜野派の始祖、
装剣金工家の浜野政随が作製。
蓋と弦(持ち手)を江戸期に京都に在住していた、
正阿弥政徳が作製しました。
先ずは、蓋の摘みですが、
鉄地に竹節がつくられ、そこに小さな蝸牛が
銀象嵌により施されています。
そして、その竹節一面に
極小の金象嵌の粒を散りばめ水滴として、
竹の表面を静かに這う蝸牛を表現しています。
鍔や縁頭を手掛けてきた浜野政随の大らかな世界観を
垣間見る事ができます。
次に蓋と弦ですが、
細身の弦の最上部には茗荷紋が下がり、
弦全体でも文様を形成しています。
又、蓋に貝を高彫に仕上げ、金を散らしています。
繊細な細工と見事な表現力を持っています。
元禄頃の装剣金工の隆盛は江戸の方に名工が
居を構えていたとされていますが、
正阿弥政徳は元禄頃に京都に居を構えている
金工家の中でも評価が高い人物です。
最後に銀瓶の胴や注ぎ口部分についてです。
胴の地に非常に緻密に雲模様が彫金されており、
その細工だけでも一つの作品となり得る程です。
風景としての彫金とは別に表現された雲と
雲間から現れている龍は高彫により大胆な細工に
なっています。
雲を二重に表現する事によって奥行が生まれ、
龍の雄大さを強調する効果が生まれています。
注ぎ口部分は真っ直ぐに伸びており、
骨董品としても使用物としても
優美で大胆な作品となっています。
