今回お買取りしたお品物は、輪島塗の懐石道具で松喰鶴蒔絵三段重です。
輪島塗の起源にはいくつかの説があります。
現存している輪島塗で一番古い物は輪島市にある重蔵神社に伝わる朱塗りの扉で室町時代に作られたといわれています。
また近年の調査で奥能登各地から漆器が見つかっており仕事場の跡も発見されました。
これにより能登の漆器作りはかなり古くから行われていたことが分かってきているようです。
漆器は海外でもよく知られ「JAPAN」と呼ばれる日本を代表する伝統的な漆工芸です。
輪島塗は石川県輪島市で生産される漆器で、天然の木地(ケヤキ、アテ、ホオ)に良質の漆を使い布を貼って補強され、100以上の手作業による心こもった工程があり丈夫さに重きをおいて作られます。
また、丈夫さの他にも優美で知られており沈金や蒔絵などの美しい装飾も特徴です。
沈金は漆を塗って仕上げた表面に刃物で絵模様を彫り、その彫線に漆を刷り込み金銀の粉を乾かないうちに刷り込んで定着させる細い線の組み合わせが特徴です。
蒔絵は漆で模様を描き、上から金銀の粉をふりかけて乾燥させ、全体に漆を塗りつぶし再度乾燥させた後に全体を研ぎ出して金銀模様を浮き出させます。
手間はかかりますが金銀の量を多く使えるメリットがあり、また貝殻のかけらをちりばめて研ぎだすことも出来ます。
輪島塗は沈金を得意としていますがヨーロッパやアメリカなどでは蒔絵の評価が高く人気があります。
今回お買取りした輪島塗は、公家調度品の文様として知られており藤原文化の代表的な松喰鶴文の蒔絵が施された素敵なお品物でした。
共箱もご一緒にございましたので、そちらと合わせての評価となりました。