今回、いわの美術がお買取りしたお品物は古薩摩写蓮葉茶碗で中野静鳳の作品です。
中野静鳳は伝統的な薩摩焼に独自の文様と彫刻を取り入れ、使い勝手の良い薩摩焼を追求しており、古薩摩写の茶道具を中心に作陶を行っております。
薩摩焼は鹿児島県で焼かれている焼物の総称で、竪野系、龍門司系、苗代川系と分かれています。
「白もん」と呼ばれる黄味がかった白地の肌の献上品要素が強い薩摩焼と「黒もん」と呼ばれる鉄分含有量の多い土を用いた日用雑器の薩摩焼の2種類に大きく分ける事ができます。
薩摩焼は豊臣秀吉の命により、島津義弘が朝鮮から連れ帰った陶工たちが始めた焼き物で、しだいに輸出用の陶器を作るようになり、当時焼かれていた薩摩焼のほとんどが海外へ輸出されていました。
海外でその知名度が高くなった理由として薩摩焼はパリの万国博覧会で人気を博した事が大きく影響しており、輸出用の薩摩焼には伝統的な日本のデザインを意識して作られた京薩摩、東京や横浜で絵付けが行われ、そのまま港から輸出された横浜薩摩などがございます。
日本に現存する当時の薩摩焼の数は少なく、近年になっていくつか日本へ戻ってきたという経緯がございます。
今回、お買取りした中野静鳳の薩摩焼の茶碗も東京国立博物館に所蔵されている古薩摩の白釉蓮葉茶碗を写したものです。
器の形はさることながら、葉脈の雰囲気、高台の模様など細部に渡って見事に再現されており、本家が白釉なのに対して、中野静鳳の蓮葉茶碗は白薩摩特有の黄味がかった白地の肌をいかしたオリジナリティも感じる事のできる茶碗でした。
共箱、共布付でとても綺麗な状態でお譲り頂きました。