今回、いわの美術がお買取りしたお品物は、堆朱重菓子入です。
堆朱は「ついしゅ」と読み、朱漆を何度も塗り重ね、厚くなった漆を彫刻して文様を彫り出す技術の事を言います。
通常の漆は、とても硬いため彫刻をする事はできませんが、油を混ぜる事によって軟らかくなり、漆の彫刻が可能になります。
堆朱を行うには土台となるヒノキなどの素地に朱漆を数十回から100回以上も塗っては乾かす作業を彫刻できる厚さまで繰り返し行います。
しかし、ただ朱漆を塗り重ねるだけでは堆朱を行うための素地が出来上がりません。
厚く塗りすぎれば乾燥した時にひび割れを起こし、その時点でその素地は使う事ができなくなります。
堆朱作品を作るためには、高い技術力と根気が必要になってきます。
お買取りした堆朱重菓子入は、かなりの厚さの朱漆を重ねられており、規則正しくならんだ模様が印象的なお品物でした。
全部で4段重ねとなっており、所々に漆のハゲやひび割れが起きていましたが、堆朱の作品という事、共箱がついていたという事で高価買取をさせて頂きました。
堆朱は中国では剔紅(てきこう)と呼ばれ、宋の時代から作られていたお品物です。
日本へは鎌倉時代に伝わった技術だと言われており、日本で盛んに作られるようになったのは室町時代中頃と言われています。
また、朱漆の他にも黒漆を塗り重ねる「堆黒」、黄漆を塗り重ねる「堆黄」などがあり、黒、黄、緑、褐などの各色の漆を塗り重ねたものを「彫彩漆」と言い、花を朱色、葉を緑で表現したものを「紅花緑葉」と呼び分けがされています。