こちらは先日お買取りした太田儔(おおたひとし)の作品で共箱には「籃胎盛器」と記されています。
この作品の作者、太田儔は大学時代に磯井如眞(いそいじょしん)の指導を受け、その後内弟子となり約11年間磯井如眞の元で学びました。
昭和30年頃、蒟醤(きんま)の素地には木が使用され、籃胎(らんたい)の素地は見かけることがありませんでした。それは明治末期に業者が質の悪い製品をむやみやたらに製作したせいだと言われています。そんな中磯井如眞に見せてもらった玉楮象谷(たまかじぞうこく)の「彩色蒟醤料紙硯箱」は籃胎素地に漆を塗った素晴らしい作品で、太田儔はこの作品を見て籃胎が漆の素地に適していることを知ります。
太田儔は後に蒟醤(きんま)の技法で人間国宝に認定されますが、籃胎素地の研究も行っており、その成果を製作に活かし数多くの優品を残しています。作品では独自に開発した二重編みの籃胎、また布目彫り蒟醤により、緻密な陰影や立体感の表現を可能にしました。
今回お買取りさせて頂きました品は籃胎素地を使用した作品です。籃胎は竹材を薄く裂いて表皮を取り去って、籠目に編んで素地としたものをそう呼びます。特徴は軽くて丈夫なことで、この素地に漆を塗り重ねたものが籃胎漆器(らんたいしっき)です。
気の遠くなるような工程を経て創りだされる作品の数々はどれも美しく、こちらの写真の作品も実物はもっとずっと素敵なお品物でした。太田儔はモチーフに自然を用いた作品も多く、そういった作品も人気の高いお品物です。
いわの美術では太田儔の作品買取も行っております。