宮城県出身の昭和~平成時代に活躍した日本の彫刻家です。
戦後の具象彫刻界の代表的存在として、生き生きとした女性像などをブロンズや木彫で表現した作品が高く評価されています。
教え子で彫刻家として活躍する笹戸千津子をモデルにした「帽子」シリーズは、佐藤忠良の名を広めた出世作として広く知られています。
一方で、福音館書店版の絵本『おおきなかぶ』の挿絵も手掛けており、彫刻家以外の一面も見る事ができます。
宮城県で生まれた佐藤忠良ですが、少年時代は北海道で過ごしました。
絵画を学ぶために上京して川端画学校へ通いますが、ロダン、マイヨール、デスピオなど新しい生命主義の作品に感銘を受け彫刻家を志すようになります。
東京美術学校で学び、卒業後は新制作派協会で活躍を見せていた佐藤忠良ですが、戦時中という事もあり召集を受け兵役につきます。
そのためシベリア拘留に遭ってしまい、肉体的、精神的にも辛い日々を送りました。
帰国するとシベリア拘留の体験から、平凡でごく普通の日常生活の中でほんの一瞬だけ垣間見る「人間の美」を追求した作品を展開するようになり、特に頭像制作が増えていきます。
徐々に動きのある女性像を手掛けるようになると、生命力に満ち溢れた躍動感のある作品が増えていき、「帽子」シリーズで現代の具象彫刻に新しい女性像の世界を示す事に成功しました。
日本人で初めてパリにある国立ロダン美術館で個展を開催し、その功績により、フランス・アカデミー・デ・ボザールの客員会員に推挙されるなど、国際的にも高い評価を得るようになった佐藤忠良は日本での評価も高まっていきます。
日本芸術院会員に推薦され、文化功労者や文化勲章の候補にも選ばれましたが、「職人に勲章はいらない」と全て辞退し、自らの制作活動と後進の指導に尽力しました。