京都府出身の昭和~平成時代に活躍した日本の陶芸家です。
ロクロを用いず形成した黒い素地に花鳥文を線刻する技法で壷を中心に作品を制作しており、繊細でありながら大胆なその作風は清水焼のモダンさを継承した高い技術力を見る事ができます。
作陶生活後半からは丸みを帯びた柔らかなフォルムに赤と青の釉が一つの作品の中で混ざり合った独自の作風を確立し、世界的にも知られる陶芸家として活躍しました。
京都五条坂で藤平陶器所を営む藤平政一の次男として生まれた藤平伸は、幼い頃から父親の仕事を見て育ち、自身も陶芸家を志すのはごく自然のなりゆきでした。
京都高等工芸学校に入学しますが、2年目で結核に侵され中退し、4年間の療養生活を送る事になります。
遅れた分を取り戻すために懸命に技術の習得に励んだ藤平伸は、帝展で特選・北斗賞を受賞すると一気にその名声が広まりました。
翌年には京都陶芸クラブに入会し、主宰者である清水六兵衛に師事しました。
清水六兵衛は江戸時代中期から続く清水焼の名家で、伝統的な清水焼の技法に新しいものを吹き込んでいる事で知られています。
こうして藤平伸の活躍の舞台は世界へと広がり、イタリアでフィレンツェ国際陶芸展に参加した事で大きな成功を収めます。
また、ドイツ、アメリカ、カナダで巡回展を行うなど世界をまたにかけて活躍する作家として日本の陶芸界を盛り上げていきました。
そんな藤平伸の作品は、茶器、花器、水指、香炉から、動物や建物の置物までユニークでほのぼのした作品を多く残しています。