京塗の塗師で江戸末期の京塗師・木村表斎を祖とする「表派」の技法を受け継いでおり、その当主が襲名している名前です。
川瀬家は初代・千太郎からはじまり、2代・繁太郎、3代・厚、4代・正と続いており、「表完」と名乗るようになったのは2代目の繁太郎の時からですので、川瀬表完という名は当代で3代目という事になります。
現在は表完工房として京都市山科区で茶道具を中心にこれまでに培ってきた本堅地塗、溜塗、木地溜塗、一閑塗、布摺、摺漆、乾漆などの技法を使ったものと、新素材を用いた新しい漆芸の制作に着手するなど、現代感覚に合せた京漆器の制作を行っています。
京漆器は室町時代以降、全国漆器産業の中心地として栄えており、その裏には職人たちの技と品質とデザインの優秀性にありました。
京漆器は他の産地には見られない「侘び」「寂び」といった内面的な深い味わいを備えており、とても優雅な漆器です。
川瀬表完はその品質とデザインの優秀性と「侘び」「寂び」を重んじた作品を制作しており、多くの茶人から愛されています。
初代はこれまでに手掛けてこなかった各種茶道具、調度品などの漆芸作品を手掛けるようになり、2代は伊勢神宮式年御遷宮に際し御神宝復元に従事し、3代はアメリカサンフランシスコで生まれ、夜間の高校に通学しながら父である2代に学び、現在も精力的に活動を続けています。