北一明は長野県出身の昭和~平成時代に活躍した日本の陶芸家で、従来に見られない造形の魅力を感じることの出来る抽象陶芸に、様々な施釉技法が駆使されている特徴的な作風で知られています。
北一明は長野県飯田市で書道家の知行合一の息子として生まれ、法政大学大学院を卒業後、料理人など様々な職を経験した後に陶芸評論家として全国の窯を訪れるようになります。
その後、焼物に関する疑問を解決する事を目的とした実験・検証を行うために、東京都中野区にプロパンガス窯を築き、陶芸家としては遅い38歳で作陶を開始しています。
北一明は、「焼きものはどれだけ無難に焼成するかという発想ではなく、どこまで坏土(はいど)が耐えられ、どのような条件で破損し、どのような条件なら破損しないのかという限界のテストである」と述べており、自身でプロパンガス窯の空気穴を塞いで焼成を行うとどうなるのかという実験を行い、窯を爆裂させてしまったというエピソードも残されているほど研究熱心でした。
またそのエピソードで全壊したと思われていた作品群の中に唯一無傷で残っていた作品が作家としての会心作として発表され、本人いわく「この自然灰の緑光彩だけは二度とできないと」後述しています。
その後も北一明は、独自に研究を重ね、窯変によって偶然発生するが原因不明といわれていた「油滴天目(ゆてきてんもく)」の発生メカニズムを解明しており、国内だけではなくニューヨークや上海などでも個展を開催するまでになっています。
さらに北一明は、広島の原爆を浴びた土を陶土に用い、世界平和の願いを込めて国際的水準で制作しているという事でノーベル平和賞に推薦されています。
また、「陶芸入門」「ある伝統美への反逆」「新やきもの入門」「北一明芸術の世界・炎道夢幻」などの多くの著作も残しました。