輪島塗は石川県輪島市で生産されている漆器で、日本の伝統的工芸品として指定されています。
輪島塗の最大の特徴は厚手の生地に生漆と米糊を混ぜたもので布を貼って補強する「布着せ」という手法を用いて、焼成珪藻土を混ぜた下地を何層にも厚く施し、漆器に丈夫さをもたらしている事です。
そのため、輪島塗は100年以上使用する事ができる堅牢さを兼ね備えた漆器として広く知られています。
輪島塗には23の工程が存在し、その手数は124もあると言われています。
また、それぞれ熟練した職人による分業制で制作されており、それぞれの職人が完璧な仕事をして次の工程の職人へと渡すという昔ながらの手法も輪島塗の魅力とされています。
また、輪島塗には沈金や蒔絵といった優美さをプラスする技法も使われるようになり、使う漆器から芸術品の漆器まで幅広く制作されるようになりました。
そんな輪島塗の歴史は室町時代までさかのぼるといわれており、現存する最古の輪島塗は河井町にある「重蔵権現本殿の朱塗扉」だといわれています。
それまでは輪島塗の特徴でもある下地技法が江戸時代の寛文年間に生み出されたと伝承されていた事から、輪島塗の起源は江戸時代として考えられてきました。
しかし発見された考古資料が室町時代までさかのぼる事が分かり、輪島市内の重蔵神社に残る文明8年の棟札に塗師たちの名前がみえる事や、明和5年に修理された同社奥の院の朱塗扉は大永4年造替時のものといわれている事などを踏まえ、室町時代には国人領主・温井氏の保護のもとに漆器生産が行われていたと考えられています。
そして、輪島塗が大きく発展した背景には江戸時代に敦賀をへて、京・大阪に販路を広げやすかった立地であった事、漆に必要な素材に恵まれ、漆器制作に適した気候であった事などが挙げられ、徹底した品質管理によって粗悪品を世に送り出さなかったという配慮が輪島塗の信用と価値を上げ、漆器の代表的存在となったのでした。