寺院仏具~密教法具について
仏教の宗派には様々ありますが、すべての宗派の目的は同じ、仏陀のように悟りの境地を開くことを目的としています。
密教とは、秘密仏教ともいわれ、釈迦の教えを民衆に分かりやすく説こうとする大乗仏教(顕教)とは異なり、閉ざされた師弟関係によって口伝される”秘密の教え”とされています。主には、空海の真言宗、密教と顕教を同格に扱う最澄の天台宗があります。
京都などの真言宗や天台宗の密教のお寺の仏堂には、密教の修行に必要な道具「密教法具」が中央の壇の上に置かれています。
密教法具は、中国から伝えられたものを手本にしていますが、日本で最初に本格的に密教法具を導入したのは、空海といわれています。
主な密教法具
金剛杵(こんごうしょ)
古代インドに由来し、煩悩を打ち砕き、菩提心を興すための法具です。杵の両端に刀が1本だけある独鈷、その両端に湾曲した刀を2本もつ三鈷、4本もつ五鈷があります。爪状の部分を鈷といい、悟りをさまたげるものを払うという意味をもちます。
金剛鈴(こんごうれい)
金剛杵の杷手(とって)の片側に鈴を付けた形の密教法具で、杵の形によって三鈷鈴・五鈷鈴・九鈷鈴や宝珠鈴・塔鈴などがあります。五鈷鈴が最も多く用いられ、修法の際に諸尊を呼びさまし、歓喜させ供養するために振り鳴らされます。
金剛盤(こんごうばん)
金剛杵と金剛鈴を置く金剛製の台のことで、蓮華を模した三角形の盤に三脚を付け、盤面に文様が施されています。
輪宝(りんぽう)
古代インドの投擲用武器で、投げて敵を倒したことから、仏教では煩悩を打ち破る法具とされています。
六器(ろっき)
受け皿を付けた6個の金銅製の器で、火舎の左右に対に並べ、閼伽(あか)・塗香(ずこう)・華鬘(けまん)の花を盛ります。
灑水器(しゃすいき)
心身のけがれを除き、供具を浄める香水を入れる鋳銅製の容器で、火舎、六器とともに檀上の諸尊の供養に用いられます。
羯磨(かつま)
三鈷杵を十字に組んだ形の法具です。強烈な開運・厄払い効果を発揮、金運を呼ぶとされ、涅槃寂静の境地を招くといわれています。
火舎(かしゃ)
蓋付きの香炉の一種で、一般には三脚がついた幅広い縁の炉に、宝珠形のつまみのついた蓋を乗せたもので、蓋には煙出しの穴が空いています。六器とともに上卓上の真ん中に置かれます。
金錍(こんぺい)
金錍はもともと古代インドで眼病患者の眼膜の医療器具であったものが、のちに法具に転じたものです。先端に宝珠が付いており、衆生の無知の膜を除き、仏心眼を開かせることを象徴する道具として用いられます。
四橛(しけつ)
檀の四隅に立てる金剛杵に似た杭で、その内側が結界であることを示す柱です。