七宝文様について
七宝文様の場合は同じ大きさの円の並列のうえに円の並列を四分の一ずつ重ねることで光を表す菱のような形と花びらのようなかたちの組み合わせが見えるという仕掛けになっており「七宝」と呼ばれています。
七宝をつないだ文様が「七宝繋ぎ文様」とよばれ、こちらはさらなる繁栄、子孫の繁栄、人の縁・関係性の円満を志向する縁起のよさを示し、華やかさを感じさせます。
「七宝」とは
七宝とは仏教の用語で七つの宝物を示す言葉であり「七珍」(しっちん)とも呼ばれております。
漢・魏・唐・宋と時代により国によって若干の相違があるものの、
- 金(こん)
- 銀(ごん)
- 瑠璃(るり)
- 玻瓈(はり)
- 硨磲(しゃこ)
- 赤珠(しゃくしゅ)
- 碼碯(めのう)
という七つの宝物は、まさしく富裕、繁栄、地位の高貴さの象徴として、また美しいものを愛でる悦楽だけがあるのではなく「七つの牢獄」ともいえるような状況をも受け入れることとなるのだ、と仏教の教えは説きます。
『仏説無量寿経』巻下のなかでは「七宝の宮室(物質的な富裕さ、地位の高さ、心身の健康・繁栄・成長を続けるビジネスなどでしょうか?)を持てる者は、これを後の代へつなぐために、金の鎖をもってす。(確実に効力を発揮する方法をつかって対処する、鎖のような強い力をもつ、重たい責任を果たさなければならない)」といった意の文章が書かれております。多くのモノ・ヒト・お金、まもるべく存在を抱えるがゆえの「金の鎖」をとるのか、そして「金の鎖」とどのように対峙するのか。
一方での「目に見える形では持たない生き方」における自由さと、持たざる自由さ故の豊かさを選び取ると、どのようことを豊かに感じられる視野を持てるのか?
それぞれの困難とはどのように対峙することになるのか?ということについて、現世を生きる人間としてはつねづね、煩悩としての好奇心としても生き方への関心としても、興味を傾けてしまうところであります!
「七珍万宝」(しっちんまんぽう)という四字熟語もまた、
- 金
- 銀
- シャコ(白い珊瑚やシャコガイの殻)
- 瑪瑙(めのう)
- 瑠璃(ラピスラズリ)
- 玻瓈 (水晶)
- 珊瑚(血赤サンゴ、紅い玉)
について表現し、これらが転じてあらゆる宝物すなわち財産や、繁栄している状態、富裕である状態を示す言葉(英語の対訳:The seven tresures and many other presious things. all the tresure in the world) であり、『平家物語』や御伽草子の『文正草子』のなかに登場します。
七宝文様のはいった骨董を査定します!
「七宝のように美しい」ということから名付けられた「七宝焼き」も、仏教のことばの「七宝」に由来しております。銅・銀などを地としてガラス質の釉(うわぐすり)で模様を作り高温で焼く七宝焼きの作品においても、人間国宝のもの、共箱があり、素晴らしい技巧の作品であれば、よいお取引となる事でしょう。
七宝の文様は100年以上前から太古の年代においてつくられ、現代をさまよう「骨董品」の中にも生き続けております。いわの美術が買取の対象品としている、職人の手仕事で紡がれてきた金糸や銀糸の着物や帯、七宝焼きの帯留め、陶工によって極めの技を発揮された茶の湯のお茶碗、蓋置や水指、皆具などにはよく見られます。これらには共箱と箱書き、銘や花押が入っておりますので、はじめの段階の査定の際にはご確認くださることで大きな一歩となります。
七宝の文様は若くからの研鑽がなければ務まらない建具の装飾の中にももれなく用いられ、現代では和を基調としたモダンなパッケージデザイン、グラフィックデザインの中などにも、身近なところでも生き続けるに至っております。