キャラバッシュパイプとは
コナン・ドイルの推理小説「シャーロック・ホームズ」のトレードマークといえば、「鳥撃ち帽」に「パイプ」をイメージされる方も多いでしょう。
映画などでホームズがいつも咥えている、大きく「U」字型に湾曲したパイプが、キャラバシュパイプと呼ばれるタイプのものです。
シャーロック・ホームズの時代のパイプは、ビリヤードと呼ばれるL型のものが主流で、小説の中ではブライヤー、チェリー、クレイのパイプしか使用されていなかったそうですが、舞台などでホームズを演じる俳優が持つ小道具を、遠くからでも客がわかりやすいようにと使用したのが、キャラバシュパイプです。以後、一般にはホームズ愛用のパイプはキャラバッシュというのが定着しています。
キャラバッシュとは、南アフリカ産のウリ科の植物で、瓢箪の一種です。
この瓢箪を切ったもの上部にメシャム(海泡石)でつくった火皿をキャップのようにはめ込み、曲がって細くなったほうにブライヤーで接続部をつくり、曲がったマウスピースを継いだものがキャラバッシュパイプです。 キャラバッシュパイプは高級品に分類されます。
キャラバッシュが喫煙道具としてイギリスで人気となったのは第2次ボーア戦争(1899~1902年)以降といわれています。
※ボーア戦争:19世紀末、イギリスとオランダ系アフリカ人(ボーア人)が南アフリカ・ケープタウンの植民地化を争った、2回にわたる植民地獲得戦争。イギリスの帝国主義によるアフリカ分割を一段と進める要因ともなった。
ボーア戦争が勃発してまもなく、ロンドンでパイプ業を営むブラター商会の二代目兄弟が、戦争を商機ととらえ、南アフリカ・ケープタウンへ向かう船の中に乗り込み、ケープタウンで小さなパイプ店を開業します。そこで兵士相手のパイプビジネスは大繁盛となりますが、イギリス本国から、当時主流であったブライヤーパイプの供給が十分ではなく、原住民が使うキャラバッシュでパイプをつくり、代用品として売ることにしました。このパイプが人気を博し、帰還兵の土産品としても需要を伸ばしました。
しかし、1902年に戦争が終わるとともにキャラバッシュパイプの需要は減り、キャラバッシュ取り寄せなどコスト高からビジネスが追い込まれた時期もありました。しかし、コスト削減に努めるなどイギリス本国で生産を続け、現在ではイギリスのダンヒル、ローウィ、チャラタンなどのほか、カナダやアメリカといった多くのメーカーが、ラインナップの中にキャラバッシュパイプを入れるまでとなりました。
キャラバッシュパイプの魅力
クレイやメアシャウムといったパイプに比べ、キャラバッシュパイプは丈夫で壊れにくいという、パイプの素材としては理想的な特性をもち、高級パイプに分類されます。
瓢箪とメシャムを使ってつくられたキャラバッシュパイプの構造は、内側が空洞になっているために煙が遊び、クールスモーキングが楽しめることが魅力のひとつとなっています。
また、喫うほどにタバコのジュースが瓢箪の内壁に染み込み、パイプの色が黄色から琥珀色、そして赤茶へと深い色艶に変化していくので、パイプ所有者が二代目、三代目代わっても長く楽しむことができます。
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