ブライヤー以外のパイプの種類・メアシャム・パイプ
19世紀初め、コルシカ島でブライヤーが発見されて以来、急激に世界のパイプが変化し、軽量で耐久性に優れたブライヤーがパイプ用材の主流となっていますが、ブライヤー以外にも様々な種類のパイプが存在します。
ブライヤーに匹敵するパイプ素材といわれているのが、メアシャムです。
メアシャム・パイプは、”パイプの女王”とも呼ばれる石のパイプです。メアシャムはMeer=海、Schaum=泡というドイツ語が語源で、日本語で海泡石と呼ばれる白色の鉱物です。
セビオライトとも呼ばれますが、含水マグネシウムケイ酸塩を主成分とする粘土鉱物です。
産地としては、かつてはオーストリア製の高級メアシャムもありましたが、現在はトルコ製のメアシャムが中心となっています。
メアシャム・パイプの発祥には諸説ありますが、最も有力な説としては、1723年にハンガリーのアンドラーシ伯爵がトルコから持ち帰ったメアシャムのブロックで靴職人にパイプをつくらせたのが始まりといわれています。
トルコ遠征から戻ったアンドラーシ伯爵が帰還の際にメアシャムのブロックを2つ持ち帰り、ブタペストの靴職人コヴァックにパイプを彫らせました。出来上がったパイプのひとつを手元に残し、コヴァックがタバコを喫いつづけていると、最初乳白色であったメアシャム・パイプが次第に色づき始めました。
それは靴職人が扱う蜜蝋が、コヴァックの手からメアシャムの表面に付着して、パイプが美しく発色するようになったのです。
その後あらためて全体に蜜蝋を施してから喫いつづけると、さらに琥珀色へと変化したのだそうです。このコヴァックの最初のメアシャム・パイプは、死後ブタペストの国立博物館に収められました。
このような説が有力とされていますが、実際のところ、国立博物館にはそのメアシャム・パイプ現存せず、過去の所蔵品リストにも残っていないということで、以前としてメアシャム・パイプの正確な歴史については謎となっています。
メアシャム・パイプの魅力
パイプ愛煙家によれば、メアシャム・パイプの魅力とは、喫いこんでいくほどにパイプが生きているかのごとく、肌の色が変化していくことにあるといいます。
ボウルの色は、最初の喫われていない状態では純白かクリーム色ですが、次第に白から金茶、そして金茶から赤茶、最後には黒褐色へと変化していくのだそうです。
最終段階の黒褐色になると、それはあたかも黒い陶製のパイプのようになり、さらに喫煙すると、黒いところに白い斑が浮だすのだそうです。しかし、その状態になるには数十年はかかるといわれています。
メアシャム・パイプのシェイプは、ブライヤーパイプのようなシンプルなものではなく、見事な彫刻が施された装飾性の高いものが多くみられます。最初、純白であったメアシャムのパイプが喫いこまれていくうちに、見事に色づいていく様は、パイプ愛煙家にとってはブライヤーパイプにはみられない味わいとなっています。
メアシャム・パイプを使用する際の注意点
メアシャム・パイプの種類は2つあり、ひとつは、掘りだしたメアシャムを削り上げてつくるブロック・メアシャム、もうひとつは、削りくずや粉を圧縮してつくった再生品で、プレス・メアシャムと呼ばれるものです。
新しいメアシャム・パイプを扱う際は、素手でボウルを握ってはならないという注意点があります。それは手の脂で指が付く可能性があるという理由からで、手袋をして喫うか、セーム皮か布でボウルを包んで喫うのがよいとされています。
また、メアシャム・パイプは堅い床に落としたりすると割れやすいという材質のため、喫い終わったらケースに収めて保管するのが安全でしょう。
その他、使い始めの新しいメアシャム・パイプは、独特なワックス臭気があるという欠点があるなど、扱う際いくつかの注意点がありますが、パイプ愛煙家なら、一度は喫ってみる価値のあるパイプといわれています。
新しいメアシャム・パイプを選ぶ際には、なるべく色が白く、大きさの割に軽く疵のないものを選択するようにしましょう。
そして、メアシャム・パイプには琥珀のマウスピースがつきものですが、古い骨董的価値のある時代の品もの以外には、本物の琥珀が使われることは殆どないといわれています。
琥珀は非常に高価なものであり、近年のメアシャム・パイプのマウスピースに使われているものの大半は、琥珀に似せたイミテーションである場合がほとんどです。もし本物の琥珀が使われたマウスピースのメアシャム・パイプであれば、それは大変に高価なものとなるでしょう。
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