ブライヤー以外のパイプの種類・クレイパイプ
タバコの歴史は、1492年に西インド諸島に達したコロンブスの航海に始まるとされますが、コロンブスの航海記録には”パイプ”の記載はみられません。
専門家によれば、ヨーロッパにもたらされた最初のパイプ喫煙は、フランスのカルチェが1535年頃のカナダ遠征で目撃した石または木製のパイプとされています(「第二回航海記録」 1545年刊)。
パイプによる喫煙が16世紀にヨーロッパにもたらされてから、20世紀初頭にかけてのパイプの主流となったのは、クレイパイプでした。かの有名なイギリスの推理小説のシャーロックホームズの中でもホームズが愛用していたパイプもクレイパイプです。またイングランド女王エリザベス1世の寵臣として知られ、新世界における最初のイングランド植民地を築いた功績を持つサー・ウォルター・ローリーもクレイパイプを愛用していたことで知られます。
クレイパイプ(Clay pipe)とは、白粘土の素焼きのパイプで、ブライヤーパイプはもとより、メシャムやコーンパイプより何百年も古い伝統をもつパイプです。
アメリカ大陸からヨーロッパへもたらされたクレイパイプは、1580年頃からイギリスでつくられはじめ、のちにはオランダをはじめ各国で製造が盛んになっていきました。
イギリスのクレイパイプの生産はロンドンに始まりますが、1620年以前にすでにイギリス全土で生産されています。
当時、イギリスではエリザベス1世のテューダー朝が終り、タバコ嫌いのジェームス1世のスチュワート朝の時代でした。ジェームス1世はタバコ嫌いにもかかわらず、輸入タバコの関税により、王室の財政は潤ったといいます。
1619年には、ロンドン・ウェストミンスターのパイプ製造業者が組合(ギルド)を組織し、1619年にそのギルドがジェームス1世から勅許を受けることで、パイプ製造はさらに盛んになり、スコットランドやアイルランドにまで多くのパイプ工房ができました。
クレイパイプの特徴
イギリスのクレイパイプは、爪のようなスパーを持つのが特徴で、初期はボウルが前傾しているデザインのものが多くみられます。一方オランダ製のクレイパイプはボウルの下にヒールが付くのが特徴です。
粘土でできたクレイパイプは、デリケートで衝撃に弱く壊れやすいのが欠点です。また放熱性がなく、ボウルが熱くなるため、手で触れられず、代わりに煙道が長くできています。また、粘土の焼ける独特のにおいが漂うのも欠点のひとつです。
落としたらすぐ割れる、素焼きのため長持ちしない、パイプの掃除ができないなど様々な欠点のあるクレイパイプは、1本を長く愛用するのではなく、パイプスモーカーにとっては「使い捨て」のパイプでした。当時の人たちはクレイパイプを”使っては捨てる”ということを繰り返していたため、貴族のクレイパイプの消費は年間1000本であったといいます。
欠点をあまりに多く持つクレイパイプは、残念ながらブライヤーパイプとシガレットの登場により廃れていき、今日では愛好家や、観光土産用ぐらいにしかつくられなくなってしまいました。
ロイヤル・コペンハーゲンの磁器パイプ
かつて、日本でも人気のあるヨーロッパのデンマークの陶磁器メーカー・ロイヤル・コペンハーゲンで磁器パイプがつくられていたことがありました。
ロイヤル・コペンハーゲンというと、食器のイメージが強く、パイプとは全く関係がなさそうですが、歴史的なパイプ作家であるヨーン・ミッケが一時期ロイヤル・コペンハーゲンのデザインを手がけていたことがありました。
ミッケが監修したロイヤル・コペンハーゲンの磁器パイプは1960年代〜1970年代前半あたりとされています。
それらは女性的で優美な「ミッケデザイン」と絶賛されたシェイプした美しいデザインのパイプでしたが、残念ながら、のちに生産が中止され、現在ではパイプスモーカーの間でコレクションの対象となっています。
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