こちらのお品物は古伊万里の柿右衛門様式『花唐草に柳下水鳥』です。
伊万里焼の中でも江戸時代始めの1610年頃から江戸時代の終わり頃までに作られた磁器を『古伊万里』とも呼んでいます。
周囲を花唐草に囲まれ、柳の下で泳ぐ水鳥が描かれ、濃淡が美しい作品です。
柳の描写は中国では明末から、伊万里では1640年頃から登場しています。
高台にある銘は『渦福』と呼ばれ、17世紀後半～18世紀に多用された銘です。
いわの美術ではこちらのお品物のような古伊万里を積極的にお買取りしております。
戦国時代～江戸時代の日本は、茶の湯の発達により質の良い茶碗などの茶陶 (茶の湯で使う陶製品)の人気が高まっていました。
手柄を立てた武将に茶碗が与えられたり、茶碗を巡って争いも頻発しています。
そのような状況で中国景徳鎮の磁器は圧倒的な人気でした。
当時の日本では陶器を作ることはできても、磁器を作る技術はありません。
そこで秀吉の朝鮮出兵の際、鍋島軍が朝鮮の陶工を連れ帰ります。
さらに磁器の原料である陶石が有田で採掘できることが判明し、1610年代からそれまで輸入に頼っていた磁器が日本でも制作可能となりました。
ただし朝鮮は白磁文化であったので模様の技術は持っておらず、中国の染付をお手本として真似て描いていたそうです。
初期は中国磁器を再現した物として日本で流通していましたが、1644年 明清の王朝交代の内乱により中国磁器の輸出が激減し、代わりとして伊万里の磁器が海外にも輸出されることとなり、ヨーロッパでも『Imari』と呼ばれるなど急速に発展しました。
素地の白に藍色の模様が入った磁器を染付と呼んでいます。
澄んだ色でグラデーションも美しい呉須(ごす)と呼ばれる染料を使用しており、本場中国からの輸入に頼っていました。
江戸末期には呉須の輸入減少が質の低下を招き、濃い青へと変化します。
明治期には人工染料の登場により、より鮮やかな青となりました。
時代と共に変化した染付ですが、古伊万里の時代の呉須を用いた自然な美しさが根強い人気です。
1670年代に柿右衛門窯にて藍色以外の色を使用した『色絵(赤絵)』と呼ばれる磁器が登場します。
色だけの進化に留まらず、繊細な描写、青みを除いた温かみのある乳白色の素地、そして傷や歪みのない完璧な形成など、品質も向上しており『柿右衛門様式』として他の窯にも取り入れられました。
柿右衛門様式の中でも、染付の磁器は『藍柿右衛門』と呼ばれ、線描きがより綿密となり、ぼかしのグラデーションが洗練されてきます。
『福』は幸せを意味する縁起の良い文字として、中国の明末に高台内の銘として多用されました。
その関係で初期の伊万里でも同じように描かれています。
1650年頃から一重線の四角で囲った福が描かれ、角福と呼ばれるようになりました。
時代と共に囲いが二重線になったり、福の字の形も辺が増えたり減ったり、色々変化していきます。
福の田の部分が☓の物もあります。
田の部分が渦巻になっている渦福は1670年代～1680年代に出現し、柿右衛門窯が有名ですが、他の窯も使っていました。
後の1885年に渦福を11代 酒井田柿右衛門が商標登録したことから、以後は柿右衛門ブランドを意味します。
しかし1928年に12代 酒井田柿右衛門が出資を受けた会社から離脱したことから柿右衛門窯では使用できなくなり、新たに『柿右衛門作』という銘を採用しました。
1944年に渦福は柿右衛門に返還されましたが、使用されないままとなっています。
それゆえに、古伊万里の銘の代表格として非常に人気です。
いわの美術では古伊万里の磁器を探しています。
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