うるしの道で60年の伝統工芸士 吉田華正による大棗です。
山中塗の漆黒の美に、ススキの穂ような『芒(のぎ)』と野菊が緻密に施され、金のグラデーションが見事な重厚かつ上品な逸品となっています。
吉田華正
吉田華正は1940年 蒔絵師・吉田栄作の長男として生まれ、15歳で中内耕峰に師事し 蒔絵・デザインを学びます。
50歳で全国漆器展日本放送協会会長賞受賞(1990年)、そして日本伝統工芸石川支部展日本工芸会賞受賞(1993年)などの受賞を重ね、通産大臣認定資格 伝統工芸士に認定(1998年)されました。
『漆芸よした華正工房』を構え茶道具を作り続け、漆の抹茶茶わん『漆茶盌』や柄杓が落ちない『漆建水』など機能面でもこだわりを見せています。
日本の花鳥風月や琳派などの古典を礎に、自らの感性で独自の美しさを圧倒的技量で表現し、多くの茶人や茶道を嗜む人から高い人気です。
三越や大丸などの全国各地の百貨店等で個展を頻繁に開催し続け、2021年も日本橋三越本店にて『吉田華正 工房展』を開催しました。
吉田華正は茶道具で圧倒的な存在であり、60年超の経験があるにも関わらず「まだ道半ば」と語っています。
今なお漆の奥の深さ・魅力に入れ込み、漆の可能性を追求し続けているそうです。
硝胎漆器(しょうたいしっき)
吉田華正は若手の育成にも尽力しており、近年の茶道人口の減少から蒔絵職人の活躍の場が失われていることを危惧し、漆芸の新たな需要を模索し続け、その一つであるガラスに漆を施す新技術が注目を浴びています。
夏場に木製漆器の売れ行きが落ちることから、清涼感のあるガラスに着目したそうです。
ガラスは漆や金箔が剥離しやすく、試行錯誤の末に九谷焼と江戸硝子の融合で知られる清峰堂の力を借ります。
下塗りを改善することにより定着性が高まり、ガラスの漆器の制作が可能になりました。
初期は既製品のガラスを用いての制作でしたが、能登島ガラス工房の協力を得て独自の形の作品制作が可能となります。
ガラス器に天然漆、金、銀、螺鈿、金沢金箔・銀箔を使って蒔絵を施し、今までにない新しい感覚の漆作品となりました。
名称は『硝胎漆器』の他、『硝胎』『華正蒔絵ガラス』など呼ばれ、国内だけでなく海外でも高い関心を集めています。
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