甲冑とは、合戦時の正装として用いられた兜と鎧具を指します。
全身を覆う様々なパーツから成り立ち、戦法の変化とともに形態を変え、それぞれの様式で古代から近世にかけて作られました。
国や家ごとに異なる意匠が凝らされた甲冑は、歴史の重みも伝える魅力的な歴史遺産であり、古美術品でもあります。
甲冑の歴史には2度の大きな転機があり、現在一般に思い浮かべられる甲冑の代表的なものは、「大鎧(おおよろい)」「当世具足(とうせいぐそく)」の2種類が挙げられます。
前者は平安時代に完成した古典的な甲冑で、後の時代も「式正の鎧」と呼ばれ推重されました。
後者は戦国時代に確立し、実戦的な機能美を極めながら工芸美も凝らされた名品が多くあります。
特に戦国武将ごとに独創的な装飾が凝らされた名品は博物館などに納められ多くの人に知られており、漆芸や金細工、威し糸の色彩、独自性の強い兜の前立てなど美術的価値の高い品が多く見所となっています。
甲冑は1000年以上の歴史を誇り、軍事的な実用品でありながら、漆芸や彫金、染や織りなどの工芸技術が込められた美術品としても重要な価値をもつ特殊な品物です。
大鎧・当世具足の名作は美術館や博物館に納められ、歴史の威光を伝えるとともに美術工芸の素晴らしい技術を今日まで伝えてきました。
日本全国に様々な由来の甲冑が残されており、一般の中古美術品市場にも流通する甲冑は熱心な収集家によって一定の需要のあるお品物となっています。
蔵や倉庫のお片付け、コレクションの見直しなどで甲冑のご売却をお考えの際、高価買取が期待できる甲冑としては
・時代が古いもの
・彫金や漆など美術工芸的に価値の高いもの
・南蛮胴や独特な前立てのある兜など珍しいもの
・兜・鎧具・籠手・脛当など一式そろったもの
等があげられます。
・時代
室町時代後期、安土桃山時代、江戸時代にかけての時代武具・時代甲冑は、近年に制作されたレプリカより高価買取となる希少なお品物です。
ただし室町前半以前の古い時代の甲冑は現存数が極めて少なく、様式から大鎧と推測できる品物の多くは、江戸時代に制作された復古調大鎧であると考えられます。
・大きさ
高価買取となるのは大人サイズ・原寸大の等身大甲冑です。
原寸大以外には、端午の節句に飾られる子供サイズの稚児鎧、装飾用の武将甲冑のレプリカなどがあり、いずれもごく古い制作年代・作家などによってはお買取りが可能な場合もございます。
・作家
甲冑師には諸流派があり、有名なところでは明珍派(みょうちんは)、岩井派、早乙女派、があり、名甲冑師による時代鎧具は高価買取となる傾向にあります。
明珍派
京都発祥の明珍派は近世の甲冑師の中で最も有名であり、元禄・宝永年間に家元制度を整え精力を拡大、「甲冑と言えば明珍」の異名を取ります。
元は轡師として天皇家にも献上し、品物の良さから明珍の二文字を賜与されたことに始まり、甲冑師として知られるのは室町時代末期でした。
相州、上州、野州、常州府中の在銘が認められ、江戸時代に入ると越前明珍派・加賀蓬莱派・仙台明珍派・土佐明珍派が脇明珍として繁栄し、現代でも黒澤明監督作「七人の侍」で25代当主・明珍宗恭が甲冑制作の指導監督を務めました。
岩井派
室町時代に勃興し奈良から分派して全国で栄え、後岩井与左衛門は徳川将軍家のお抱え具足師となり歯朶具足を制作し、春日大社の紅絲威鎧、御嶽神社の鎧二領、厳島神社の黒韋威胴丸などの補修も手掛けました。
早乙女派
桃山時代末期に興ったとされる流派で、現在の茨城県下妻市で兜・鍔の制作をし、鍛えの良い三十二間・六十二間の小星兜鉢・筋兜鉢を多く制作しました。
鉢の天辺がややくぼみ後頭部が高い後勝山が特徴で、明珍派に比べ大ぶりな作風です。
春田派
奈良で仕立仕事に始まり後に兜を手掛け発展していき、江戸時代からは備前・雲州・因州、尾張・越前・加賀へ分派し、紀州の雑賀派は春田の出と言われています。
室町時代末期になるまで甲冑師はほかの多数の職人の一つでしかなく、銘を彫る慣習が無い中、戦国時代に入り春田派が他に先駆けて作者銘や紀年銘を彫るようになり、明珍派や早乙女派へ伝播しました。
その他、紀州の雑賀派、戦国時代から元禄にかけ越前で栄えた脇明珍の一派・馬面派、同じく越前で甲冑師として活躍した後、江戸へ移り刀匠に変わっていった長曾禰派、美濃の根尾派などがあります。
甲冑の多くは江戸時代以降、先祖の栄光を伝える家宝として、鎧櫃に納められ蔵などに保管されました。
蔵は温湿度を程よく保ち、先祖伝来品の保管庫として長く日本で重用された建物です。
敷地に蔵のあるお宅というのは限られた存在でもあり、蔵やその中に古美術品を多くもつお宅では、蔵の奥のほうに時代武具が未だ眠っているケースがあります。
整理整頓の際に注意して見ていただくと、新たな発見があるかもしれません。
戦乱の世を想起させる武具でありながら凝った意匠や豊かな色彩など、美術工芸品の側面もある日本の甲冑は世界的に見ても珍しい存在であり、国内外の蒐集家から注目を集めています。
甲冑として一式揃いでない場合も、金工の技巧が凝らされ装飾的な兜や、赤備えの胴丸など、一部でもお買取りが可能な人気のお品物もございます。
いわの美術では美術品・骨董費品を中心にお買取りを行っており、過去に甲冑のお買取り実績もございます。
ご売却をお考えの兜・鎧具・甲冑やその他刀剣などの武具がございましたら、ぜひ一度ご相談くださいませ。
お見積りやお買取りは無料で行っております。お気軽にお問合せ下さいませ。