根付(ねつけ)は、着物の帯に煙草入や印籠、矢立てなどを提げるための留め具として生まれ、現代のストラップの原型ともいわれています。袋や印籠などに紐をつけ、その先端に根付を取り付け、その紐を帯の外へぶら下げるという要領で、江戸時代から流行り出しました。
当時は、日常品として実用本位な簡素なデザインのものがほとんどでしたが、江戸時代後期からアクセサリーとしての意味合いが強まり、デザインや彫り物、絵付けを入れるなど次第に趣味の世界のものとなっていきました。
根付はバラエティに富んだ題材の多彩さが特徴のひとつで、大別すると以下ように分けられます。
人物…男、女、子、老人、外国人、僧、兵、芸人、花魁など年齢や職業を問わず、また洗濯女や酒飲みなど生活の一場面を映し出したものが多い。
動植物…犬、猫、猿、兎、狐、鼠、馬、鹿、鳥、魚介類、爬虫類、花、実、野菜など。
その他…風景、調度品、鬼の面、七福神、観音、閻魔、仙人、化物、幽霊、竜、河童、孫悟空、義経、弁慶、桃太郎、木曽義仲など架空のものや伝説・歴史上の人物など様々なモチーフがある。
室町時代、印籠(いんろう)は印鑑や朱肉を入れる箱の総称でしたが、江戸時代の初期頃には、携帯用薬入れを指して、印籠と呼ぶようになりました。根付同様、印籠も当初は、実用本位なデザインでしたが、江戸時代中期から趣味小物の世界のものとして転じていきました。
江戸時代には特に男性はお洒落というような遊びの部分が皆無で、数少ない自己表現の手段が印籠でした。そのため、小さい面積の中で凝りに凝った細工が追求され、工芸品の域に達するに至ります。
印籠の装飾には、蒔絵ばかりではなく、木材に金属、象牙、珊瑚などを嵌め込む象嵌や、重ね塗りした漆の層に模様を彫る堆漆(ついしつ)、貝殻の薄片を表面に嵌め込む螺鈿など、多彩な技法が用いられ、素材としては、木製、竹、象牙、金属、陶磁器などがみられます。
根付・印籠は海外から逆輸入により再評価
根付も印籠も日本で生まれて、海外から日本文化の価値を再評価されたものです。根付も印籠も日本では日常的なものとしてあまりにも身近な存在で国内では芸術品として評価されていませんでしたが、幕末から明治・大正時代にかけて、多くの海外コレクターが根付や印籠のとりこになり、大量の佳品が海外へと流出しました。
その頃に根付・印籠を蒐集した海外の有名コレクターには、スイスのバウアー、イギリスのマイナーツハーゲンらがいます。
日本人が根付の価値を正しく認識しはじめたのは、近年になってからで、海外から熱心にいわれ逆輸入のような形で、ようやくその価値に気が付き再評価されました。昭和50年代あたりから、日本で根付研究会が発足し、根付里帰り展が開催されるなどしました。
根付・印籠には下記のような名匠と呼ばれる有名作家や人気作家がいます。根付や印籠には贋作が多く、来歴が確かなら信頼に足る名品といえ、評価に大きく影響します。作家の銘があっても、来歴がはっきりしない作品は、十分な注意を払う必要があります。
根付
岡友(おかとも)
懐玉斎正次(かいぎょくさいまさつぐ)
森田藻己(もりたそうこ)
友忠(ともただ)
内藤豊昌(ないとうとよまさ)
山田法実(やまだほうじつ)
京都正直(きょうとまさなお)など
印籠
尾形光琳(おがたこうりん)
小川破笠(おがわはりつ)
塩見政誠(しおみまさなり)
柴田是真(しばたぜしん)
梶川二代久次郎(かじかわにだいきゅうじろう)
古満二代休伯(こまにだいきゅうはく)など
根付の良し悪しや価値は、時代や作者により異なりますが、それ以外にも、モチーフ、彫り、素材によっても違ってきます。めったにみないような珍しいモチーフの根付はそれだけで貴重です。
彫りの良し悪しも、評価の際には大切なポイントです。職人・作家の仕事の粗雑なものや保存状態が悪く、精巧さが失われてしまった作品は、価値が減ってしまいます。
素材では、象牙や鹿角、柘植(つげ)などが主です。陶磁器のものもありますが、やきものであると壊れやすく、完品で残ることが難しいため、時代ものの陶磁器製で保存状態のよいものは、稀少価値があるといえます。
象牙、骨製、木彫の根付や印籠等、骨董品的価値のある時代ものの作品は、世界中の人々から蒐集品として大変人気があります。
査定では、象牙の根付は高価買取の対象となりますが、偽物も多いのも特徴です。香港に売られている象牙の根付のほとんどが贋作といわれており、判別には目利きが必要となります。
名工の手によるものや、内国勧業博覧会、万国博覧会出品作、精巧な細工がほどこされている、デザインの凝ったもの、旧家伝来、来歴が確かなもの、共箱などの付属品がしっかり揃っているものは高価買取対応致します。
銘が入っているものは高価買取につながりやすいですが、贋作も多く、また無銘であっても、作品の出来や素材、保存状態などがよければ高額査定が期待できる場合もございます。
古根付だけでなく、現代根付も買取対応しておりますので、是非お問合せください。