宝石・貴石と同様、ジュエリー分野でも人気の高い宝石珊瑚は、鉱物ではなく生物由来の独特な素材です。
珊瑚虫という動物が群生して固化する過程で、海中の微量なマグネシウムやカロチノイドが反応し、バリエーション豊かな美しい色合いが生まれます。
珊瑚虫は触手の数が6本のものと8本のものとに分かれ、前者は亜熱帯の浅瀬の海中で広大なサンゴ礁を形成し、後者が特定の深海で群生し、宝石珊瑚となる樹枝状の骨格を作り出します。
珊瑚は色と産地で種類が分かれます。
世界で最初の一大産地である地中海で採れる珊瑚は全体に単一な赤色で、日本産に比べ明るい色合が特徴です。
日本産は地中海産にはない「フ」という白色が混ざる特徴があり、見分けるポイントとなります。
多様な色の珊瑚それぞれに魅力があり、骨董品買取の分野では下記のように分類しています。
血赤珊瑚
文字通り血のような深い暗めの赤色で稀少価値の高い赤珊瑚の最高峰といえいます。
日本産―とくに高知県の土佐産が世界的に有名で、「オックスブラッド(Ox Blood=雄牛の血)」「TOSA」の通称があります。
赤珊瑚
血赤珊瑚より明るい赤色珊瑚の総称です。
地中海産と日本産では色合いが異なり、フや色むら、白濁や傷、ヒの有無でグレードが決定します。
桃色珊瑚
日本近海でのみ採れ、欧米では「エンジェルスキン」の通名で幻の珊瑚として珍重されました。
ピンクを基調として赤に近い色からごく淡い色まで幅が広く、赤珊瑚と同様にフが見られます。
粘度の高い性質から彫刻に適し、彫のある帯留めやブローチ、かんざしなど装身具に多く用いられます。
白珊瑚
ピンクやセピアを含んだ柔らかな白色で、純白や象牙色は非常に希少となります。
天保年間に世界で初めて発見した土佐の漁師の名に因んで「Konojoi(幸之丞)」の学名がつきました。
現在では日本以外に中国・台湾近海やミッドウェーで採取されます
珊瑚が初めて発見されたのは地中海の沿岸、かつてローマ帝国領であった地域です。
地中海産の珊瑚は水深100m未満にあり、漁業産業として早くから確立しました。
古代から近代まで長きにわたり珊瑚の主産地は地中海でした。歴代の帝国との交易品にも珊瑚が登場し、古代ローマからペルシアへ、そこから中国、日本へも渡ってきました。
正倉院宝物にある珊瑚もその一つで、当時ペルシアの中国表記が胡国であったことから、「胡渡り珊瑚」と呼ばれています。
仏教の無量寿経における七宝に数えられるなど、仏教圏の美術工芸で長い間珍重され、1830年に日本近海で初めて珊瑚が発見されるまでは、珊瑚というと胡渡り珊瑚を指しました。
地中海の紅珊瑚の残量が乏しくなった19世紀、イタリア珊瑚ビジネスの中枢にいたトール・デル・グレコという珊瑚商人が新産地を求め日本へ渡ってきました。
この時に土佐で赤珊瑚が発見され、深い赤色の血赤珊瑚と「天使の肌」とまで形容した日本独自の桃色珊瑚に感嘆したと伝えられています。
日本産の珊瑚は原木の大きさも十分にあり、稀少すぎて彫刻を施す発想にいたらなかった胡渡り珊瑚の時代が変わり、仏像彫刻や様々な装身具の素材としても重要となりました。
明治に入ると長崎の福江島と薩摩などにも珊瑚漁が広まり、輸出品目の有力品の一つとなり経済成長を支えます。
珊瑚のご売却では、石自体の重さ・大きさも重要となります。
ジュエリーはもちろんのこと、彫刻や装身具でも、大振りで上質な珊瑚は高額となる場合があります。
稀少な天然資源である珊瑚は、需給のアンバランスから市場に偽物も流通しています。
珊瑚の偽物の多くは外側から染色た塗装したもので、内部まで染まりきらないこと・彫刻などでは細部に塗料の溜まりが生じて見分けることができます。
真贋が定かでないものを割ることは難しいので、その場合は熱しても熱くならない珊瑚の性質を利用し、白熱灯などの下に晒し確認できる場合もあります。
珊瑚は欧米でもジュエリーとして人気がありますが、彫刻など細かな美術工芸品素材としても台湾・中国で人気が高く、これらの国の経済成長とともに珊瑚の市場価格が上昇しました。
珊瑚原木は1mm伸びるのに10年かかると言われ、成長に非常に時間がかかります。
そのため需要が高まったところで供給が不足し、乱獲や密猟などに晒されいずれ枯渇しかねない問題が起きています。
珊瑚が採取不可能となる未来を回避するには適切な採取量を守る必要があり、あらたな珊瑚の採取が限られるなかでは古くからある、既存の珊瑚の再利用も重要と言えます。
珊瑚の需要が高まっている昨今、ご家庭などにある珊瑚を手放される場合は、しっかりと査定できる業者にご売却されることをお勧めいたします。
宝石珊瑚、ジュエリーの珊瑚としては、血赤珊瑚のオックスブラッドや桃色珊瑚のエンゼルスキンを代表に、カットやサイズにより高価買取となります。
彫刻や置物など美術工芸分野では、観賞用原木・仏像彫刻・技巧的な彫刻を施された香炉・その他の置物など、いずれもサイズが大きく良質な天然珊瑚のものが、
中古市場でも高額でお取引されている傾向にあります。