インペリアル・イースター・エッグ
今回は大きなオークションハウスでも滅多に紹介されることがないロシアのインペリアル・イースター・エッグを紹介いたします。
宝飾品の卵がインペリアル(皇帝)と表わされる所以は、かつてロシアに帝政があったころ、ロマノフ王朝のニコライ二世が、妻・アレクサンドラや母にイースター祝のエッグを贈るために王室御用達の宝飾デザイナーであったカール・ファベルジェにエッグと、あらゆる宝飾品を特注で作らせたことに始まります。
このようなインペリアル・イースター・エッグ「ファベルジェの卵」には、「アゾフの思い出」「デンマークの宮殿」「コーカサス」「春の花々」など一つ一つにドラマを感じさせるような題名が付けられています。現代では再現することが非常に難しい、あるいは不可能な程の金工の技法で装飾が施され、世界的にも類を見ない宝物として大変高い価値を与えられた名品です。
インペリアル・イースター・エッグのある所
インペリアル・イースター・エッグは一説によると、地球上で1885年から1917年の間に58個作られ、所在が確認されるものは44個、行方不明のものは14個あると言われ、そのありかは、世界の中でもトップレベルの美術館と博物館、フォーブス家などの世界で一握りの富豪たちの元へ散逸し、一部は金として溶かされてしまったのではないか?との懸念も唱えられています。有るときにはアメリカの蚤の市でくず鉄として買取られていた荷物の中から行方不明の8個のうちの一つの純金のエッグが発見され、ファベルジェの研究者らにより、本物であると断定されました。華奢な細工の秒針に美術的な価値が高いヴァシュロン・コンスタンタンの時計が仕舞われたインペリアル・イースター・エッグがロシアの王宮からアメリカのうらぶれた工業都市に流され続けたことへの驚きに加え「これは時を超えた奇跡である」とも報じられました。
インペリアル・イースター・エッグはどんなもの?
インペリアル・イースター・エッグの豪華絢爛さのヒミツは貴石と貴金属をふんだんに使った外側の装飾にくわえて、内側の細工やエッグが開く仕掛けにも秘められています。例えば「サファイアの鶏卵」は、サファイアでできた殻を明けると卵黄が出現し、卵黄の中にダイヤが敷き詰められたクラウンのミニチュアとペンダントが入っているという作品です。「アゾフの思い出」は翡翠でできた本体を明けると精巧な巡洋船アゾフ号のモチーフが出てくる仕組みで、水面も美しい水晶でできています。インペリアル・イースター・エッグは、本体の開き方の仕掛けがチューリップの花弁のように四方へ広がるものや、コンパクトのように上下に開閉し時計が仕込まれた純金のエッグなど、一つとして同じものがないといった有りようで見る者を飽きさせることがありません。一つ一つのインパクトが大変強いインペリアル・イースター・エッグや、カール・ファベルジェの宝飾品が一堂に介し、その全貌が明らかとなるような機会がいつの日か来るかもしれません。
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