日本人が制作したハンドメイド・パイプです。
製作者T.Yukawaの所在は知られておらず、作家であったのか、趣味で作っていたのかさえ不明となります。
1970年代を中心に作品が残っており、現在アンティーク・パイプ愛好家の間では知られた存在です。
T.Yukawaの時代背景
日本の高度成長期であった1960~1970年代はパイプのブーム期でした。
シクステン・イヴァルソン、ヨーン・ミッケ、イエス・コノウィッチなどのデンマークのフリーハンド・パイプが人気の中、日本人の中でもパイプ制作を制作に興味を持つ人々が現れ、T.Yukawaもその一人だったと推測されます。
同時期の作家では、今では日本パイプ界の巨匠となっている徳富博之(H.TOKUTOMI)が有名です。
徳富博之は1976年から数ヶ月、デンマークの巨匠シクステン・イヴァルソンの元で修行をしています。
しかし1980年代にはパイプのブームは終焉してしまい、徳富博之が脚光を浴びるようになったのは2000年代のパイプ・ブーム再来まで待つこととなりました。
近年は徳富博之(Hand Made Japan by HIRO)の過去の作品も高値で取引されるようになり、柘製作所の福田和弘によるIKEBANAシリーズも非常に人気です。
他にも有田静生(CARVED By S.ARITA)、柳原重義(YANAGIHARA)、浅利法生(ASARI HAND MADE TOKYO)に注目が集まっています。
そんな中で作者に関する情報不明の『T.Yukawa』は愛好家の間では知る人ぞ知る存在で、中古市場でも人気が高い作家です。
日本でのパイプブーム
日本にパイプが入って来たのは幕末~明治の西洋化の時期です。
しかし日本には元々 煙管(キセル)があり、パイプと同時期に取り入れられた紙巻煙草のほうが主流となります。
その後、第二次世界大戦からの西洋文化の排除、そして敗戦を迎えました。
昭和天皇が敗戦を告げてから15日後、絶対権力者として日本に君臨したマッカーサー元帥が飛行機から降りて来る時に咥えていたのがパイプです。
その姿は衝撃的であり、敗戦に打ちひしがれていた多くの日本人がパイプに力強い勝者のようなイメージを抱いたのかもしれません。
そしてパイプがブームとなり、マッカーサー元帥がアメリカに帰国する1951年頃までブームは続きます。
次のブームは1960年代後半~1970年代です。
前述した通りデンマークのフリーハンド・パイプをコレクションとして集める愛好家が増えます。
遊び心があるユニークな形や、エロスを追求した形のパイプも多く創作されました。
その後日本のみならず世界で禁煙や分煙が進み、パイプを楽しむ機会が激減しますが、2000年代からはインターネットの普及と多様化の時代となり、再び人気を盛り返しています。
今後この人気がどうなるかは不明ですが、現在が良い売り時かもしれません。