五虎退吉光(ごこたいよしみつ)は粟田口派の刀工、粟田口吉光が打った短刀で、上杉景勝御手選三十五腰の一つとしても知られています。
粟田口吉光は現存作のほとんどが短刀であったことから、短刀作りの名手だと言われています。作品は五虎退の他に、薬研藤四郎(薬研通吉光)、骨喰藤四郎などが挙げられます。
また一振りのみ太刀も打たれており、一期一振と名付けられています。
上杉景勝御手選三十五腰は愛刀家であり、卓越した鑑定眼を持った上杉景勝が所蔵品から特に気に入りとしたものを選出した名刀のリストです。
五虎退という名にはこんな由来があります。
室町時代、足利義満の遣いで明(中国)に渡った役人が五匹の虎に遭遇してしまいました。虎を恐れた役人はなりふり構わず短刀を振り回し、目を開けた時には虎は居なくなっていたそうです。
役人がこの出来事を足利義満に報告すると、五匹の虎を退けたことから、この短刀は五虎退と名付けられました。
上杉謙信(当時長尾景虎)が足利義輝の要請で永禄2年(1559年)に上洛した際に、正親町天皇より拝領し、以後上杉家に伝来していましたが、後に明治天皇へと献上されています。