福島県出身の日本画家で、のどかな農村風景や自然と人物などの調和を基本とした詩情豊かに表現された作品が特徴です。
水墨調の画面ですが暗さを感じる事はなく、逆に暖かさを感じる事ができ、その中でも雪の風景を描いた作品は高く評価されています。
これは、自身の出身地である福島の雪深くなる冬を知っているからこそ表現できたのではといわれています。
同郷の画家・坂内青嵐に師事した酒井三良は、河童の絵で知られた小川芋銭と出会い、院展に出品を重ねるようになりました。
当初は決して裕福とは言えない生活を送りながら制作活動にあたっており、それは作品にも強く反映されていました。
近代日本画壇の巨匠として知られる横山大観の勧めで五浦の大観別荘へ住むことになった酒井三良は、太平洋に面した豊かな自然の中で8年間過ごす事になります。
こうして徐々に心の余裕を取戻しつつありましたが、戦時中の混乱もあり、妻の郷里新潟から送られてくる僅かな米で一家は慎ましく暮らし、釣りと写生に明け暮れながら制作活動を行っていました。
戦後、ようやく生活の安定を得られた酒井三良は、自然に親しむ人間と自然を作品として描き出すようになっていきます。
この頃から強い影響を受けていた小川芋銭の作風から写実性が加わった酒井三良自身の作風へと変化していきます。
こうして、五浦から東京へと転居し、近所に住んでいた奥村土牛と親交を深め、研究会に参加するようになりました。
日本美術院同人となり、院展文部大臣賞を受賞するなどその地位を確固たるものにした酒井三良は、院展の重要人物として活躍を続けました。