中国・四川省出身の中国の書画家です。
20世紀の中国人芸術家の中で特に国際的な名声が高く、書、篆刻、詩の分野でも活躍した事で知られています。
作品は山水画に高い評価が集まっており、花卉の描写は実に見事で蓮の花をモチーフにした作品では独自性を発揮しています。
著名な画家ではあるのですが贋作者としても有名で、ニューヨークのメトロポリタン・ミュージアム所蔵の董源の「渓岸図」が張大千による贋作かどうかについて公開シンポジウムが開かれたほどで、双方の学者や研究者たちが意見をぶつけ合いましたが、最終的には結論は出ませんでした。
そんな張大千ですが、若い頃から伝統的な中国画の技法の修行に励んでおり、19歳の時に京都へ留学し、京都芸術専門学校で3年間染色を学びました。
帰国してからは上海で個展を開催し、高い評価受け「南に張あり」と言われるほどになり、中央大学芸術専攻教授をつとめるなど中国画壇での中心的な画家へと成長していきました。
ちなみに留学を終えて帰国してからも日本で開催された唐宋元明中国画展の代表として日本に短期訪問したり、旅行で鎌倉を訪れたりしています。
その後、敦煌の莫高窟の壁画の模写に取り組むために2年7ヶ月の間、莫高窟に住み込み、芸術的で美しい作品となるように古ぼけた各時代の壁画の変色・剥落した部分を推定で補いながら模写を続け完成した作品はあまりの素晴らしさに広く知れ渡り、後に莫高窟に赴いた書画家・謝稚柳は「敦煌石室記」「敦煌芸術叙録」という記録を残すほどでした。
中国国内で精力的に活動を続けていた張大千ですが、内戦が始まると香港へ移り、最終的にはアメリカやブラジルなどの国外に約20年以上滞在する事になります。
海外での滞在期間中に当時流行していた印象派や立体派などの技法を中国画に取り入れた作品を制作するようになり、ニューヨーク国際芸術学会では金賞を受賞し、カリフォルニア州太平洋大学では名誉人文博士号を取得しました。
国際的にも活躍した張大千は晩年には台北に落ち着き、水墨画に専念し、潑墨という技法により絵に動きを出したり色彩のコントラストを強めたりする力強く気韻に満ち溢れた作品を生み出しました。