角彫は動物の角を使って彫刻をした工芸品で、精巧で上品な工芸品が多く存在します。
珍しいものでは刀の鞘、刀の柄、指貫、マッチ箱、タバコ入れ、茶の桶などがあり、これらは中国の工芸品でよくみられ、日本では根付に角彫の作品を見る事ができます。
素材としては主に牛、羊、鹿、サイの角を使用しており、特にサイの角で彫られたものが多く、明清時代で飛躍的な発展を遂げました。
明の時代では、経済の発展を背景に文人雅士の愛好と支持により、彫刻師が丹精を込めて作品を制作し、精細さと精緻さを極めていった作品が多く、清の時代では伝統を受け継ぎながらも精緻で優雅な彫刻作品が多く制作されました。
また、皇帝は民間の彫刻師たちに「南匠」と「北匠」に分け彫刻品を作らせ、互いにライバル視させた事で乾隆年間にもっとも発展を極めました。
そのため多くの彫刻名匠が宮廷や地方から輩出され、現代で高い評価を受けている角彫は明清時代に制作されたものが中心となっています。
サイの角は、明清時代からも大変人気が高く、サイの角を求めてサイの乱獲が行われていたため、20世紀に入るとサイの個体数が減ってしまい、サイの角を入手する事が困難となってしまいました。
そこで牛の角で彫刻するのが主流となり、広西チワン族自治区の北海、黒龍江省のハルビン、内モンゴル自治区の包頭、広東省の高州、湖南省の衡山などで角彫が行われるようになりました。
角彫の制作技法は玉彫(玉とは翡翠の事)を参考に行っていますが、牙や玉と違って30以上の工程を経て作品へと仕上げるため、1つの作品を作るにはかなりの時間が必要とされている事も角彫が中古市場で注目を集めている要因の一つとなっています。