創業年=2002年
創業者=ピエール・クンツ
創業地=スイス(ジュネーブ)
「ピエール・クンツ」は、現代の天才時計師の一人に数えられるスイスの時計製作者であり、彼が作りだす時計のブランド名である。「スピリット・オブ・チャレンジ」をブランドの標語に掲げているように、ユニークなコンセプトはもとより、伝統的なスタイルにとらわれない挑戦的な複雑機構とデザインを追求して数々の名作を世に出し、「レトログラードの魔術師」とも称されている。
「ピエール・クンツ」といえば、針が円でなく扇形の往復運動して時刻やカレンダーなどを表示する「レトログラード機構」が有名。その独自の美しさを表現する複雑機構を自由自在に操り、「パピヨン」(2002年)、「キュピドン」(2005年)などの名作モデルが生まれている。
さらに「スピリット・オブ・チャレンジ」を具現化した、時計の常識を覆すモデル「インフィニティ ルーピング」を2008年に発表。運針表現の極みとも称される。これは一本の針が文字盤上で自転と公転を同時に行いながら時刻を指すという画期的な機構で、針に時針や分針といった役割の区別はなく、一筆書きのように描かれた数字目盛と対応させて現在の時刻を読み取る。しかもこの針自身も回転し、偶数の時間から奇数の時間に移動するにしたがって宙返りのように逆を向く。幾何学でいうところのエピサイクロイドの無限ループ曲線の生成だが、この前代未聞のコンプリケ-ションが、ウオッチメイキングの芸術性を象徴する傑作として評価されている。まさにピエール・クンツの真骨頂が発揮されたモデルといえよう。