岐阜県の郡上を中心とした織物。
「農民の生活から生まれた素朴な紬」本来の姿が群上紬だ。
千年以上もの歴史をもつこの地の絹糸は「曾代絹」と呼ばれ、
伊勢神宮の新職装束を織る糸と定められていたほど良質なもの。
農民たちは長年絹糸を生産しながら、屑繭を紡いで
自家用の紬を織っていたが、伝統は時代と共にうすれていった。
それを蘇らせ、さらに新たな技法までも生み出したのが
重要無形文化財技術保持者の宗廣力三である。
宗廣力三が開発した「どぼんこ染」という技術は
染料液に垂直に糸を入れ、吸い上げる力を利用して染色する。
少しずつ引き上げたり、染料を減らしたりすることで
より美しく、自然なぼかしを表現した。
郡上紬の特徴は、どぼんこ染はもちろんのこと
縞や格子で作る幾何学文様もそのひとつである。