鞨鼓/羯鼓(かっこ)は、雅楽の演奏で用いられる太鼓です。
鞨鼓の胴は鞨胴と呼ばれる中央部がわずかに膨らんだ円筒形の筒で、桜など硬い木で作られています。この鼓胴と叩いて音を出す鼓面と呼ばれる部分から構成されています。
鼓面は鉄の輪に馬や牛などの皮をはりつけて作られており、調緒(しらべおり)呼ばれる紐で絞めつけられています。調緒を締めたり、緩めたりすることで音程を調節することができます。
鼓胴は、様々な色で彩色が施され、多くは花の模様が描かれています。鞨鼓の大きさは、胴の長さ約30センチ、直径約15センチ、皮を張る鉄輪の直径は約23センチです。
鞨鼓は管絃と左方の舞楽で用いられます。
鞨鼓は台に載せた状態で演奏され、奏者は左右の手に長さ26cmほどの細長いバチを持って、左右の両面を打ちます。鞨鼓を打つことを「掻く」といい、先端が棗の実の形に模した2本のバチで、円を描くように掻きます。
鞨鼓の奏者は楽曲の進行を導くリーダー役にあたります。曲の始めや終わりの合図を出し、演奏経験が豊富な楽長など、ベテラン奏者が担当することになっています。宮内庁楽部の演奏では、鞨鼓の奏者のみが、演奏の開始前と開始後に礼をするそうです。
鞨鼓の演奏は、ポンと一回だけ打つ「正(せい)」と片手で連続的に打つ「片来(かたらい)」、両手で連続的に打つ「諸来(もろらい)」といった奏法があります。
鞨鼓にはこの3種類の打法と、それを数小節に渡って組み合わせてパターン化した20種以上の奏法があり、楽曲毎に奏法のパターンが決められています。終曲に向かって変化していく曲のスピードを、全体をリードしながら調整しながら演奏する鞨鼓の奏者には、大変高度なテクニックが要されます。