大角幸枝は、金工芸の『鍛金』で、
2015年に、国指定重要無形文化財保持者(人間国宝)
に認定されました。
鍛金や彫金といった金工の分野では女性初の人間国宝認定者
となります。
道具にこだわり、鍛金・彫金・布目象嵌という
3つの技術を駆使し、自分の形を表現、金工に対する
評価の高い海外で日本の伝統工芸を積極的に広めています。
静岡県生まれの大角幸枝は、
1969年に東京藝術大学美術学部芸術学科工芸史専攻を卒業後、
彫金の桂盛行と鹿島一谷、鍛金の関谷四郎に師事し、
金工の技法である『鍛金・彫金・布目象嵌』など高度で広範な
金工技法を修得します。
鍛金
板状の金属を鉄床等の上に置き、
熱を加えて金属の柔軟性、弾力性を回復させながら、
金鎚や木槌で打ち上げて器を造形していく技法のことを言います。
鍛金は、金工の主流をなす技法の一つであり、
古くから、仏具・武具・茶器等の制作に利用されてきました。
また象嵌は、金属の表面に模様を彫り、
別の金属を嵌めこむ事によって、それぞれの金属の色や質感の違い
によって模様を表現します。
布目象嵌
象嵌の中でも、鉄地など金属の表面に多方向から、
細い切れ目を入れて、切れ目の谷部に金銀等を打ち込む
象嵌技法を言います。
京都で繁栄したことから "京象嵌" との呼称もあります。
**作風について**
主な作風として『波・流水・雲・風・月』といった自然を
テーマに器物へ表現しています。
元々物造りが好きだったこともあり、芸術の道に進んだ
大角幸枝は、幼少期に静岡で生まれ育った環境、
また子供の頃によく遊びに行っていた "海や空" といった
景色が深く印象に残っており、
その情感豊かな装飾が現在の自身の作品に反映されています。
現代は作品のアイデアが飽和状態で、その工程は全て機械で
作れてしまい、AIで手作業のアナログ表現さえ可能になりつつ
ありますが、
大角幸枝は、敢えて形をある程度頭のなかでイメージした後、
デザインをスケッチに起こし、作成していくと自身の
インタビューでも回答しています。
また制作している作品の多くは、花器や茶道具、書道具と
言ったものですが、日常生活の中でも普段から使ってもらえる
事を信条としており、
作品が国内問わず注目されている秘訣なのかもしれません。
1986年 第33回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞
1987年 第34回日本伝統工芸展 銀打出花器『風濤』日本工芸会総裁賞
1991年 第1回 香取正彦賞、第4回 MOA岡田茂吉賞展 優秀賞
1998年 第28回 伝統工芸日本金工展 日本工芸会賞
1999年 第29回 伝統工芸日本金工展 東京都教育委員会賞
2009年 第56回 日本伝統工芸展 銀打出花器『風韻』日本工芸会保持者賞
2010年 紫綬褒章受章、第17回 岡田茂吉賞展 MOA美術館賞
2014年 第61回 日本伝統工芸展 日本工芸会保持者賞
第1回 米国立スミソニアン協会客員作家選定
2015年 重要無形文化財保持者(鍛金)認定
2017年 旭日小綬章受章
・銀打出花器 『風韻』
・銀打出花器 『風濤』
・鍛銀水滴 『海鳴り』
・銀打出花器 『潜龍』
・南鐐花器 『海風』
・南鐐花器 『潮風』