19世紀に活躍したスイスの象徴主義の画家です。
19世紀末のヨーロッパの美術界はフランス印象派の最盛期でしたが、ベックリンは文学、神話、聖書などを題材に想像世界を画面に表現しました。
スイスのバーゼルで生まれましたが、青年期以降はヨーロッパ各地を転々としており、その大部分をドイツやイタリアで過ごしています。
ドイツの美術学校で学び、教鞭もとった事のあるベックリンですが、初期の頃の作品は風景画などのロマン派的な作風でした。
次第に幻想とリアリズムの作風へと変化していき、それはシュルレアリスムの先駆者とみなされるようになります。
ベックリンの代表作である「死の島」はベックリンが名付けたものではありません。
この作品は全部で5種類制作されていますが、最初の制作は若くして夫を亡くした婦人から「夫を偲ぶときに夢想する絵が欲しい」という依頼を受けて制作されたものでした。
画面から出ている雰囲気はまぎれもなく「死の気配」で、この世の世界のものではありません。
この「死の島」の対極にあたる「生の島」という作品も制作しており、喜びと色彩に満ちた生命力を感じる事のできる作品となっています。
ベックリンのこのような世界観が第一次世界大戦後のドイツの人たちから絶大な人気を誇り、多くの一般家庭が複製画を飾っていました。
もちろんアドルフ・ヒトラーもベックリンの作品を好み、収集家としても有名です。