画像にある作品はロバート・ハインデルの「End of Innocence」です。
バレエダンサーがレッスン場で稽古をする様子を中心に描くハインデルの円熟から活動終末期である1986年から2005年の間に、ハインデルがミュージカルのワンシーンを描いた、ひとひねりある作品です。2015年の初夏に行われた「没後10年 ロバート・ハインデル展―光と闇の中の踊り子たち―」(そごう美術館)においては、代表作「メシアを待ちながら」が公開され、ハインデルの画家としての「ダンサーの表情の深み」を描きたいという想いが込められた作品群、彼の生涯について回顧される機会があったことは記憶に新しいところですね。
ハインデル作品のコレクターとしては、ダイアナ、モナコのキャロライン王女(カロリーヌ・ド・モナコ)、高円宮憲仁親王などが知られています。ハインデルは生前、クリント・イーストウッド、ジョージ・ルーカスや、『キャッツ』『オペラ座の怪人』などの作曲家アンドルー・ロイド・ウェバーなどからも敬愛されました。草刈民代などといった日本のバレエダンサーとも親交があり、『MIYAKO』というシリーズでは英ロイヤルバレエ元首席の吉田都を描き、バレリーナ吉田都のしなやかで凛とした表情を描いています。
1982年にハミルトン・キング賞を受賞してからファインアーティストへと転身したハインデルは、ロイヤルオペラバレエやニューヨークシティバレエ、パリ・オペラ座などといった欧米の著名なバレエ団から公演前のリハーサルに招かれて取材を行うようになり、イギリス・オランダ・日本でも作品を発表しました。美術専門誌『ギャラリー・インターナショナル』においてハインデルは「現代のドガ」と評されて紹介されるも、苦悩の中で画家としての高みに挑戦し続けました。
描くポイントを絞り込んで画面の間合いの効果を活かして描くことで、スピード感をもち、的確に情景を伝えてくる点が「現代のドガ」とまで評されるハインデルの作品の特色といえましょう。
バレエをされていた方や身体美を追求する方、舞台芸術を愛好される方に、ハインデルの作品は人気がありますゆえ、お査定にあたっても、比較的よい結果を望める作家のうちの一人として、ロバート・ハインデルの作品はお勧めです。
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1938年 オハイオ州トレドに生まれる。
1962年 デトロイトへ移住し、アートスタジオに就職、独学で絵画を修学する。
1963年 偶然手に入れたチケットで観賞したイギリスロイヤル・バレエ団のショーに感銘を受け、ダンスおよびダンサーの躍動感を表現するために筆を取ることを決意。
1968年 コネチカット州に移住、『TIME』や『PLAYBOY』などの雑誌へイラストを寄稿。
1978年 ダンスをモチーフとした初の個展を開催。
1982年 全米イラストレーション協会よりハミルトン・キング賞を受賞。
1986年 ミュージカル『キャッツ (ミュージカル)』『オペラ座の怪人』を描き話題となる。
2005年 コネチカット州の自宅で死去。66歳
●メシアを待ちながら (1990年)
画家としての成功の傍ら「バレエダンサー、バレエという芸術が持つ深みをなかなか捉えきれない」というハインデルの画家としての苦悩、私生活においては息子のトビーが進行の早い癌に侵され、余命を宣告されたという出来事があった時期にバレエ演目「メシアを待ちながら」に出会ったことがきっかけで描かれた作品です。薄暗いスタジオで天を仰ぎ、光を受けながら背を反らすダンサーのふもとには、”T”というイニシャルが描き込まれています。トビーに残されていたわずかな生の安寧への悲願の表れなのでしょうか?