囲碁の碁盤専門の碁盤師によって作られた本榧の碁盤は、実用面だけでなく工芸的価値のある品物です。
いわの美術では碁盤・碁石のお買取りを行っております。
写真のお品物は碁盤師・岡村虎吉による脚付き大型の碁盤で、高評価にてお買取りいたしました。
良質な碁盤の素材は、おもに本榧(ほんかや)が用いられます。
榧はヒノキや杉よりも成長速度が遅く時間をかけて成熟し、年輪の幅が狭く繊細な木肌は碁盤の目を邪魔せず、且つ碁石の安定する滑らかさが碁盤に向くとされ、広く認知されていきました。
榧の木は日本と朝鮮半島に分布し、日本では北関東~福島県を北限として暖帯林・山地に生育し、福島県桑折町の万正寺の大榧は推定樹齢900年で日本最大となっています。
奈良県春日山と宮崎県日向地方が榧の代表産地となり、耐湿性もあることから嘗ては建築・造船の最良材とされていました。
本榧は輸入素材をベースとした「新榧」と区別され、直径1.1mを超える成木になるまで300年を要すことから原木の伐採も制限されたため年々稀少となっており、新品の本榧碁盤は数百万円に上る高級品となっています。
本榧は使用寿命が非常に長い良材であり、新品の高騰と相まって、中古の本榧碁盤は中古市場で人気のある品物となっています。
長きにわたって高級碁石(白)の人気素材であったスワブテ貝は蛤の一種ですが、絶滅危惧から近年価格が高騰しています。
それに伴い新品で流通する蛤碁石は多くがメキシコなどからの輸入品となっており、国産蛤碁石は中古市場で本榧碁盤と並び人気の品となっています。
黒い碁石は那智黒石で、こちらは三重県産が主となっています。
碁盤に生命を吹き込むのが、面の目盛りを作る「太刀盛り」です。
名前の通り太刀を用いて切り込みを入れていく、技術力を要する伝統的な工程のため、現在では行われる工房が少なくなりつつあります。
鋭利な刃で切ることで輪郭が際立ち、漆の盛り上がりも高く、滑らかな面に端正な描線が揃うと、耐久性と美観を兼ね添える一級品の碁盤となります。
今回お買取りいたしました品物は、本榧の脚付き碁盤のなかでも価値のある木取り、大木の半径からとられた「天柾」で、「天地柾」「四方柾」とともに最高級に分類されます。
桐覆い内部の署名によると昭和55年製とのことで、本榧の魅力である年月を経た美しい色合いがみられ、使用と経年による一般的な変化がみられます。
こちらの品物は、側面にシラタというより色むらが生じていますが、見事な柾目の木目が美しく、また盤面は繊細な木目が見られ、個性ある逸品となりました。
また高密度な本榧は比重が重く、こちらの碁盤も重さ20kgに及びます。
年数の経過した本榧は新品購入時よりも盤面が安定し狂いがなく、大型の本榧原木が希少になる中、大切に受け継いでいきたい品物でした。
いわの美術では美術品・骨董品を中心に幅広くお買取りを行っており、碁盤・碁石も多数お取り扱いしております。
碁盤のお買取り時には、作家名・桐覆いの有無・木目の種類・状態などによって評価が左右されます。
中古市場で人気の高い碁盤は、岡村碁盤店・岡村虎吉のほかに、
平井芳松、吉田碁盤店・吉田寅義、黒田鷺山などの碁盤師・碁盤店のものや
呉清源、瀬越憲作、木谷実、藤沢秀行などの名棋士の直筆署名のある品物は高額査定の可能性のあるお品になります。
ご売却をお考えの際はぜひ、いわの美術へご一報くださいませ!