今回お買取したお品物は、最後の名工とうたわれた駒師・金井静山(かないせいざん)の将棋駒です。
将棋の駒といえば山形県天童市が有名ですが、金井静山は東京都港区芝大門の出身で、80歳を超えても将棋駒を作り続けていたことでも知られています。
金井静山の本名は金井秋男といい、芝大門に蔵を3つも持つ大きな質屋の長男として生まれています。
そんな金井静山は、幼い頃に父の骨董屋で手伝いをしていた時に近所に住んでいた近代将棋駒の祖といわれている豊島龍山(とよしまりゅうざん)の勧めが駒師になったきっかけだとされています。
その後、豊島龍山の息子も駒を作っていたのですが1940年に相次いで豊島龍山親子はこの世を去ってしまい、豊島龍山の駒工房は閉鎖となってしまいます。
しかし、駒木地がたくさん残っていたことや2代龍山の未亡人の依頼もあり、龍山の駒名で金井静山は駒作りを継続したそうです。
そのことから「龍山静山」の駒と呼ばれるようになり、影の駒師として世に知られるようになりました。
そんな金井静山は彫った文字に漆を盛り上げて塗る盛上駒しか作らなかったことでも知られています。
金井静山は86歳で没することとなりましたが繊細で流麗な作風が認められ、影の駒師ではなく「最後の名工」といわれるようになっています。
今回お買取した金井静山の将棋駒は数ある技法の中でも最も華やかとされている盛上駒で、金井静山の代表的な書体の1つである源兵衛清安書(げんべいきよやすしょ)が用いられている駒でした。
また、駒台と駒箱を入れる収納箱もついており、将棋界を代表する中原誠と大山康晴の対戦に使われたお品物ということもあり高価買取となりました。