写真はこの度、いわの美術でお買取いたしました白地に藍色の意匠が印象的なデルフト染付花鳥文壺です。17世紀に制作された貴重な古伊万里をお譲りいただきましたが、保管状態が良く、経年にともなう退色などの劣化が最小限にとどまっていたため、ご依頼主さまにもたいへんご満足いただく買取価格でお取引を行うことができました。
デルフト焼はオランダの古都デルフトの町で生産された世界的にも知られた陶器です。16世紀初頭にイタリアからマヨリカ焼の製法が伝わり、デルフトでも陶器の製造が行われるようになったと考えられています。
17世紀にオランダ東インド会社が中国から磁器を輸入したことをきっかけに、日本からも伊万里焼など大量の肥前磁器が運ばれ、ヨーロッパ各地に東洋趣味磁器が大流行しました。
この流行をいち早く取り入れたデルフトの窯場では、1695年頃より、伊万里写し、柿右衛門写し、硬質の陶器など、独特の磁器の生産が盛んにおこなわれるようになりました。ドイツの名窯で知られるマイセン窯で伊万里写しが作陶されはじめたのが1725年ごろと言われているので、デルフトの陶工たちのトレンドにたいする敏感さ、また新様式を取り入れる技術の高度さをうかがい知ることができます。
ロイヤルデルフト(Royal Delft)
日本では前出のマイセンやイギリスのウェッジウッドなどの陶磁器の名窯をよく耳にすると思います。ほかにもフランスのセーブルやデンマークのコペンハーゲンなど、世界の有名陶磁器に名前こそ押されがちですが、オランダには日本との縁の深い名窯が古くから存在します。オランダ王室からロイヤルの称号を授かった『ロイヤルデルフト』は、デルフトブルーと呼ばれる独特の青い陶器で知られるオランダの国を代表する名窯です。ロイヤルデルフトはデルフト焼が確立された17世紀半ばから続く唯一の窯元で、1653年の創立から現在まで、デルフトの町で粘土を材料に作った器に透明な釉薬をかけ、ひとつひとつ手作業で絵付をするという方法で作られています。
染付は、成形して乾燥または素焼きした素地の上に、呉須とよばれる青色顔料で文様を描き、そのうえから透明な釉薬をかけてから高温で焼成することによって得られます。
中国では「青花(せいか)」と呼ばれ、「染付」とは日本独自の呼び名で、白地に藍の文様を染め付けるようだと染織のことばで表現されました。
日本初の磁器である伊万里焼は、1610年代の誕生当初から景徳鎮窯に代表される中国の染付磁器を目指したそうです。伊万里焼が手本にした中国の染付磁器には、「古染付」、「祥瑞手」、「芙蓉手」があります。
伊万里焼は、自由でのびやかな筆遣いとしゃれた文様の「古染付」、細い線で幾何学模様を生み出す「祥瑞手」、また花の芯に主文様、花弁に吉祥文を配する「芙蓉手」を駆使し、その構図や文様を独自のものにアレンジしていきました。そのおかげで伊万里染付の表情は青一色でも豊かです。のびやかな筆遣いと色の濃淡のみの優れた技術で表現されるのは、本作品にみられる花鳥文をはじめ、中国風の山水画、鳳凰や魚、時には唐人などの動物や人物だったり、松竹梅などの植物を配したものだったり、バラエティ豊かに展開しています。
さまざまな意匠を組み合わせるだけでなく、器面を大胆かつ複雑に枠取りしたものだったり、皿の縁いっぱいまで文様や図柄を描く構成が独創的だったりと、古伊万里の器のなかに展開される技の数々は、現代の私たちの目にも新鮮に映ります。その人気は国内のみならず、海外ではold imariと呼ばれ、熱心なコレクターが数多く存在します。
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