こちらは先日お買取りさせて頂きました、今泉今右衛門の薄墨蓋物です。
陶器や漆器などで蓋のあるものは蓋物と呼ばれます。
今泉今右衛門は肥前有田の伝統ある窯元で、代々赤絵付けを専業としていました。
17世紀後期になると赤絵屋は鍋島藩の保護下に置かれ、今泉家は藩の御用赤絵師として藩窯の色絵付を行います。しかし江戸時代から明治に移り変わると鍋島藩窯がなくなり、御用赤絵屋の制度も同時に消滅しました。
藩の保護がなくなった反面、一貫した自由な磁器生産が可能となり、当主であった10代今泉今右衛門は本窯を築きます。これより色鍋島の制作が行われ、優れた赤絵の技法が確立されました。
今回の蓋物は13代の創造した「薄墨」という技法の作品です。13代今泉今右衛門は伝統的な色鍋島の技法に加え、現代感覚の作陶を目指していました。
呉須釉薬を吹き付ける吹墨を基本として薄墨、吹重などの技法を確立し、技術的功績、表現力ともに高い評価を受け、重要無形文化財「色絵磁器」の保持者ともなっています。
13代は既に亡くなっており、現在は平成14年に襲名した14代今泉今右衛門が品格の高い色鍋島の作品を制作し活躍されています。