今回、いわの美術がお買取したお品物は、池上秀畝の掛軸です。
池上秀畝は明治から昭和にかけて活躍した日本画家で、特に山水画、花鳥画を得意とし、多くの作品を残しています。
長野県の紙商兼小間物屋の次男として生れ、祖父は高遠藩御用絵師に狩野派を学び、自らの画論『松柳問答』を刊行し、父親も岡本豊彦から四条派を学び、祖父と同様、俳句や短歌を詠み、茶道や華道など趣味三昧の生活を送っていたため、自然と絵の描き方を覚えていきました。
そのため、14歳の頃には自ら「國山」の号を用い、自作に「圀山」印を押すほどの腕前を持っていました。
小学校を卒業すると本格的に絵師になろうと父親と共に上京し、瀧和亭、川辺御楯を訪ねましたが、父親はその二人を気に入らなかったため、親戚から紹介された当時無名だった荒木寛畝の最初の門人、内弟子となり文人画を学びました。
一時、洋画の研究にも手を出していましたが、師・荒木寛畝によって止めています。
しかし、洋画を研究した影響は作品に表れており、日本画でありながら丹念に描き込まれ、どこか洋画的な要素を持つ作風となっております。
また、池上秀畝の号は、父親と師である荒木寛畝から一文字ずつとって「秀畝」としています。
今回、お買取りした掛軸は、夏の朝の一瞬を描きあげたようにも見える作品で、朝顔の向こう側に雄鶏と雌鶏が仲睦まじく寄り添う双鶏図となっており、池上秀畝の得意とする見事な花鳥画でした。
池上秀畝の晩年の作品には「秀畝作」と記されているのですが、こちらの作品は「秀畝」でしたので、晩年の作品ではない事が分かります。
象牙軸で高い評価が期待できるのですが、軸の破損が見られ、カビも生えている部分がございましたので、その分がマイナス評価となっての買取となりました。