こちらの茶壺は以前お買取りさせて頂いた茶壺で、表面だけでは錫しか見えませんが、内部を見ると紫砂を錫で包んだ品だということが分かります。
片面には漢詩、もう片面には松の絵が彫られています。このように錫の装飾が施された茶壺は当時の中国の文人趣味にあいまって流行しましたが、錫による重みのため実用性に欠けたのか、流行りを過ぎるとあまり製作は行われなくなりました。
外側を包んでいる錫部分には小さなカケキズや凹みが見られますが、全体的に整った茶壺で、蓋の摘み部分には玉が使用されています。
蓋を開けて内部を覗くと、内部底には楊彭年と書かれています。
この楊彭年というのは字(あざな)を「ニ泉」、号を「大鵬」といい、清朝年間に活躍した宜興窯の名工です。
兄弟に同じく宜興窯の陶工として活躍した、楊鳳年という妹、楊宝年という弟がおり、それぞれ数多くの名品を残しました。