このお品物は大阪府のお客様よりお買取させていただきました。 象牙は非常に硬いと思われる方もいらっしゃると思いますが、 実は象牙は彫刻に用いられる材質の中でも適度な粘りと堅さを もっている最高の素材であり、このお品物の様に透かし彫りを多様する際には非常に適しています。 一見すると分かり辛いですが、この象牙に彫刻されているものは大蛤であり、 中国の古書『彙苑』によれば、この大蛤の別名として『蜃(シン)』と呼んでいました。 『蜃』とは、密度の異なる大気の中で光が屈折し海上等に現れる『蜃気楼』を人々に見せる 伝説上の生物といわれています。 鳥山石燕の妖怪画集『今昔百鬼拾遺』において『蜃気楼』の名前と共にその描写があり、 この蜃が『気』を放ち楼台(楼閣)を見せる事から『蜃気楼』名付けたと思われる。