今回、いわの美術がお買取したお品物は坂本直行の水彩画「流氷(ウトロ)」です。
ウトロとは北海道オホーツク総合振興局斜里郡斜里町にある地名で、アイヌ語では「ウトゥルチクシ(その間を我々が通る所)」と言い、ウトロの海岸沿いには夕日の絶景ポイントやアイヌの遺跡があります。
今回、お買取した坂本直行の作品もそのウトロの海岸沿いに流れ着いた流氷の姿を描いた作品でした。
シミや汚れもなく、額の裏には作家のサイン、タイトル、制作年月日が記されており、肉筆の作品という事でしたので高価買取となりました。
坂本直行は北海道出身の画家ですが、北海道開拓民郷士坂本家8代目当主で、この坂本家というのは幕末の偉人として有名な坂本龍馬が生まれた土佐藩の郷氏株、つまり武士の権利を買った事から郷士坂本家として始まり、その3代目である坂本八平は坂本竜馬の父親にあたります。
つまり、坂本直行は坂本龍馬の末裔という事になります。
ちなみに坂本龍馬と妻の間には子供がいなかったため、龍馬の姉の息子がその跡を継いでいますが、それも5代目で途絶えており、現在、坂本龍馬の直系は存在せず、坂本直行のような郷士坂本家の子孫が全国に点在しているようです。
そんな家庭環境を持つ坂本直行ですが、父親の勧めで北海道帝国大学(現・北海道大学)農学実科に進学しており、絵画とは無縁の世界で生きていました。
大学在学中は山岳部に所属し、登山に親しみ、卒業後は温室園芸を学ぶために東京の温室会社に就職しています。
北海道へ戻ると札幌で温室園芸会社を立ち上げますが、資金繰りに苦しみ、廃業となってしまいました。
次に選んだ職業は牧場経営で、この頃から北海道大学山岳部OBとして日高山脈中部の山ペテガリ岳登頂計画に参加するなど北海道の自然に触れる機会が増え、その自然をモチーフとした風景画を描くようになります。
1957年に北海道札幌市で初めての個展を開催し、成功をおさめ、その勢いで東京でも個展を開催した事をきっかけに本格的に画家として活動を行うようになります。
札幌にアトリエを構え、大自然に画題を求め、ヒマラヤやカナダなどを訪れ、水彩画、油絵、版画など多くの作品を制作しています。
その作風は鮮やかな色彩と、無駄のない描線が特徴で、北海道の代表的な銘菓であるマルセイバターサンドを手掛けている六花亭の包装紙を手掛けており、その包装紙からも坂本直行の作風をしっかりと感じる事ができます。