今回いわの美術では、版画家の井上員男の作品をお買取り致しました。
香川県で生まれた井上員男は、高校3年の後半くらいから独学で油彩画を描きはじめ、25歳で初めて太平洋美術会全国公募展に作品を出品し、東京都知事賞を受賞します。
その後美術担当の教師となり生徒達に指導しながら自身も作品制作を行い、38歳でペーパー・ドライポイントという版画の技術で独自の技法を開発し一躍脚光を浴びました。
美術教員として教壇に立ちながら自身も作品制作を続けていた井上員男ですが、本格的に版画家として歩む為、25年間の教員生活に幕を閉じ東京に移住します。
56歳では今までの功績が買われ在仏日本大使館主催ユネスコ日本週間博覧会から招待出品を受け「版画平家物語」「雪国」「アヤメ」の3作を出品しました。
その後は地元香川県の中学校美術教員に対してペーパー・ドライポイントの技法を教え教育界の美術の発展に貢献します。
ペーパー・ドライポイントとは
井上員男が独自の技法の開発に成功したペーパー・ドライポイントというのは、版画の中の1つの技法です。
1960年に小学校の教材として日本の教材会社が開発し、その当時は流行したものの美術作品までの領域に持っていく事が出来ず廃れてしまいます。
しかし、井上員男の開発によってぼかし・中間の色・立体感・空間感の表現も作り上げる事が出来ました。
井上員男は、まず下絵を描きトレーシング・ペーパーに写し取り、樹脂加工を施した0.7㎜の厚紙の原板にカーボン紙と下絵を写し取ったトレーシング・ペーパーを裏返しで乗せて下絵をなぞり原板に写し取ります。
原板に写し取った線をカッターやナイフなどで濃淡に応じてはぎ取ったりした後に、ガーゼなどで綿を包んで縛ったタンポという物で原板にインクを塗っていきます。
塗ったインクを別布で拭いた後エッチング・プレスと呼ばれる機械でプレスし和紙に刷れば版画の完成です。
井上員男の作品は、白と黒のみを使い立体感と奥行きのある作風となっています。
細かい所もしっかりと表現されていて、版画とは思えない素晴らしい作品です。
今回こちらのお品物は、福岡県の方からお買取り致しました。
こちらのお品物以外にも、お茶道具や掛軸など大量のお品物があった為出張にてお伺い致しました。
いわの美術では、お値段のつく物に関しましては全てお買取りさせて頂いております。
コレクションの売却や遺品整理などお困りな事がございましたらいわの美術までお問い合わせ下さい。