いわの美術では、この度井堂雅夫画『平成版浮世絵 京都百景 東山十景』を買い取らせていただきました。
作者の井堂雅夫は、日本の四季折々の風景を版画をはじめとする絵画の世界で表現し、ぬくもりと情感あふれる作品で現代木版画界を牽引しました。
本作品は、江戸時代から伝わる手彫り・手摺りによる浮世絵技法で、作者が5年の歳月を費やして完成させた京都を代表する100の名勝を描いた作品のうち、清水寺や高台寺、八坂神社など、京都きっての寺社が集まる東山を10の景観に収めた第一集です。
作者の井堂雅夫は終戦直後の1945年11月、中国で生まれました。引き揚げ後、岩手県盛岡市に移り、東北の大自然のなかで15歳までの幼少期を過ごします。子供のころから絵を描くことが好きだった井堂は、しばしば絵画コンクールで入賞するなど、この頃より天性の才能を発揮させています。
中学卒業を目前にした15歳の冬、両親の離婚により慣れ親しんだ東北を離れ、母の実家のある京都市に移ります。そこで出合った日本の伝統産業に魅せられた井堂は、伝統工芸師で染色家の吉田光甫に弟子入り、次いで日展評議委員でもあった染色家・大坪重周に師事しました。
染織作家を目指し、模写や運筆、写生に励み、長い下積みの日々を過ごしたのち、やがて染色工房を開いて独立を果たします。独立後、25歳のときに木版画に出合い、「彫り、摺り」の技術を習得、以来、木版画と染色の二つの世界を基本とした「もの創り」を展開します。
1972年初の個展を皮切りに、京都をはじめとする国内主要都市、アメリカ、オーストラリア、スイス、中国などで木版画展を開催するなどして活躍すると同時に、和装産業においても着物や帯を制作してショーを開き、日本舞踊家花柳寿美の舞台美術を担当するなど、日本の伝統芸術の継承発展において広く功績を残しました。
井堂は「京都の地で、歴史によって熟成された伝統文化である染色を志したことで、先人たちの優れた技術を学べたことに感謝している」と語りつつ、1993年には長年の想いを実現させ、幼少期を過ごした岩手にアトリエ「勇作殿青雲庵」を新しく構えます。
宮沢賢治生誕100年に向け、その世界観を取り込むため、自身の故郷でもある花巻の田園にアトリエをかまえた井堂は『心象の賢治』と題した作品と文章を岩手日報に連載したり、花巻市の宮沢賢治生誕百年祭のポスターデザインを手掛けたりと、木版画だけにとらわれず自由な表現方法で、心のなかに湧きあふれるままの『もの創り』に没頭します。
宮沢賢治の世界観に大きな感銘を受けた井堂雅夫は晩年「賢治の心を絵画という手段で表現し、一人でも多くの人々に伝えることに残された生命を燃やし続けていきたいと願っている」と言葉を残し、2016年惜しまれながら70歳でその生涯を閉じました。
日本の四季折々の美しい景色を題材とした井堂雅夫の作品はいずれも情感にあふれ、見る者の心に感銘を与えます。日本の伝統技術を未来に託したいとの想いが詰まった作品は国内のみならず、アメリカや中国など海外の美術館においても称賛されています。
今回いわの美術で一部買い取らせていただいた京都百景のように木版画で表現された百景が市場に出回ることは非常にまれで、井堂雅夫のような著名な作家による作品だと更にその価値も高い評価の対象になり得ます。しかしながら、作品の保管状態により査定額が大きく左右されるのも事実です。
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