今回、いわの美術がお買取りしたお品物は内田巌の油彩画です。
内田巌は新制作派協会(現・新制作協会)の創立会員で、戦後は日本美術会の初代書記長をつとめ、左翼的社会派リアリズムをリードした洋画家として知られています。
画家としての道を歩むきっかけになったのは、父である評論家・内田魯庵に勧められたからで、父親の稼いだお金は内田巌の絵学ぶ費用に充てられていたと言われています。
東京美術学校では藤島武二に師事し、戦時中は戦争画を描く事はせず、戦後は共産党に入党したことで内田巌の絵はなかなか売れなかったそうです。
そのため、1960年代までは様々な美術全集や戦後美術を回顧する展覧会に作品が展示されていましたが、1970年代に入るとその姿を見る回数が激減しました。
また、藤田嗣治に戦犯容疑をかけて、日本から追い出した張本人として美術書にその名前が登場していますが、その真意は両者の口から詳しくは語られていません。
作品は、上手いと評価されている事は少ないのですが、世の中に与えた影響は大きく、没後に多くの遺作展が行われ、コレクターも多い事が確認されています。
お買取りした油彩画は、暗い色彩の画面に描かれた少女の姿で、モデルとなっている少女は自分の娘ではないかと思われます。
今回の油彩画以外にも娘をモデルにした作品を手掛けており、肖像画に関しては正面からではなく横顔を描く事が多かったようで、お買取りした作品とは違った雰囲気を持っています。
額縁の縁の部分はありましたが、前面のガラス板(アクリル板)、裏面の板が無い状態での買取となりましたが、油彩画のコンディションは極めて良好で、良い評価での買取となりました。