今回買取したお品物は中島千波のリトグラフです。
中島千波は戦後の日本画家のリーディングヒッター的な存在の1人で、日本画家である中島清之を父に持ち、近年までは東京芸術大学美術学部デザイン科の教授でもありましたが、2013年に退任しました。
中島千波は若き頃から風景、人物、花木と常に新しい課題に挑戦し、すべて高い評価を受けており院展でも奨励賞などを数回受賞しています。
中島千波の作品で主に代表されるのは桜で、桜花図の第一人者です。
描かれる桜は日本各地の名木、古木の桜で感性を生かしじっくりと観察し、丹念なスケッチを行い日本画の伝統的な技法を取り入れつつ、艶やかな色彩で華麗で幻想的にさえ感じてしまう世界を描き出します。
今回買取したリトグラフに描かれている醍醐櫻は、岡山県一の巨木といわれており、他の桜の木と比べると1本だけ空高くそびえ立ち圧倒的な存在感があります。
ヒガンザクラの一種のアズマヒガンで、伝説では後醍醐天皇が隠岐配流の際に美しくそびえ立つ樹齢700年(地元の説では1000年)ともいわれるこの桜を見て賞賛したといわれたのが名前の由来です。
買取した作品の技法はリトグラフです。
リトグラフは平版とも言われており、水と油の反発を利用して平らな版で刷る版画で、版の材料も石、アルミ版、ジンク版、木があります。中でもアルミ版と木は多くの作家が使用しています。
今回買取となった中島千波のリトグラフは発行枚数は全部で200枚で、額装にキズと裏にシミがあったのは残念ですが販売元や工房の分かる発行書付のお品物で、いつまでも桜の生命感と春を感じられそうな素敵なお品物でした。