今回、ご紹介させていただくお品は、
舟越保武作 ブロンズ像 『LOLA/ローラ』です。
この女性頭像モデルは、舟越保武がスペインのセビリアを訪れた際に親しくなった
経済学者の娘ローラがモデルと言われています。
作品はスケッチや写真により制作をされ、その後は毎年送られてくる彼女の写真を
もとに、LOLAは何体も作られました。
この作品シリーズは、少女から大人へと成長していくローラの姿の変化を見ること
ができ、ブロンズのほかにも、リトグラフや大理石、テラコッタ等で作られた
作品が多種にあります。
+作家紹介+
舟越保武は、佐藤忠良と共に戦後の日本を代表する彫刻家です。
東京美術学校(現・東京藝術大学)時代から、同級だった佐藤忠良と共に、
練馬のアトリエ付き長屋に住んでいました。
後に石彫刻の作家として知られるようになったキッカケでもある作品『隕石』を、
作ったのも練馬のアトリエと言われています。
また自身が幼少期、戦時中に郷里へ疎開を経験したこと、結婚後には長男が幼くして
病死するという悲運に見まわたこともあり、家族全員でカトリックの洗礼を受け、
その影響もあり、作品にも優しさが印象的で整った面立ちの女性頭像や、
キリスト教信仰や、キリシタンの受難を題材とした作品が数多く残されています。
長崎26殉教者記念像の序幕式のあとに、島原の乱の戦地である原城址を訪れた際、
迫害されたキリシタンに思いを馳せて制作した作品『原の城』
この像は後にローマ教皇(パウロ6世)へ献上され、"大聖グレゴリオ騎士団長"勲章を、
受けています。
自身が脳梗塞で倒れ、右半身が不自由になった際も、すぐにリハビリを開始し、
2002年の亡くなる直前まで左手で創作を続けた舟越保武。
とある作品集のために寄せた短いエッセーには、
自らの考えの尺度にそって制作を進めることの愚かさや種々の煩悶や苦痛を仕事に
影響させてはいけない。
彫刻を作る職人としてすべての煩わしさから自分を解放して仕事をしよう…と
記しており、その遺志は息子であり彫刻家で、次男の舟越桂や、三男の舟越直木に、
引き継がれています。