今回ご紹介する写真のお品は、象牙師悦玉による霊芝彫香枕です。
悦玉は香枕のほか、根付、香筒、精緻な山水図をあしらった茶合など数多くの象牙作品をのこしています。いわの美術にお譲りいただいたこちらのお品は、共箱が付き、保管状態も良好で、悦玉ファンならずとも、香道具をお探しのコレクターにとっても、価値ある希少なお品です。
「お香」は、日本文化のなかできわめてユニークな展開を遂げてきました。
仏教においても、東南アジアや中国などの仏教諸国に比べて、日本では香はよりデリケートで品位の高い用いられ方をしてきたと言えます。
平安時代以来、生活環境は基本的に無臭であることを重んじてきたのも、貴重な舶来ものの香や花を、日本の風土文化において珍重するためであったと考えられていて、たとえば、日本が以前から暑熱や黄砂舞う風土だったとしたら、このようなデリケートな嗅覚文化は成立が困難であったであろうと推測されています。
古くより、美しい海岸の風景を『白砂青松(はくしゃせいしょう)』などと形容してきた日本人の美にたいする気風や感性に適合して展開した独自の香文化は、「源氏物語」や「枕草子」などからも知ることができるように、文学や詩歌と深く結びつき、今では、より幅広い和の文化として、暮しに溶け込んでいます。
「香枕」と聞いて思い浮かべるのは、伽羅枕とも呼ばれる、なかに香炉を置いて髪に香りをしみこませることができる箱型の枕のことではないでしょうか。
今回、ご紹介しております写真のお品は、手の平に納まる根付ほどのサイズで、香道具、また煎茶道具として用いられてきたものです。
香枕は、決して一般的に馴染み深いものではないかもしれませんが、古くから日本人の暮らしに深く関わり、歴史的にも重要な役割を果たしてきた香文化から展開した「香道」の席において、香筒枕として使われます。
香筒とは、線香の保管や携帯に使われる細い筒形をした入れ物のことで、香枕は、その香筒をちょうど箸をおく箸置きのように乗せる枕として使われます。
小さなお道具にも気を配り、繊細な香りに感覚を研ぎ澄ませる香道や香の文化は、古人が好んでたしなんだ雅な遊びというだけでなく、目まぐるしい変化のなかで生きる現代の私たちにこそ、ひと手間をかけてお香をたく心のゆとりと共に、ゆったりとした時間の流れに溶け込むような癒しを与えてくれるのではないでしょうか。
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