温かみのある風合いで存在感豊かなこちらのお品物は、十代大樋長左衛門による大樋釉茶碗です。手びねりの成形とヘラ削りの文様は大樋焼の特徴とされ、茶碗のふち部分の緩やかな動線や低く扁平な高台の削り出しにもその独創性があらわれています。
大樋焼(おおひやき)は石川県金沢市で江戸時代から焼き継がれている楽焼の脇窯です。
寛文6(1666)年、裏千家4代目にあたる千仙叟宗室が茶道奉行に加賀を訪れ、これに同行した陶工・長左衛門が現在の金沢市大樋町に窯を開いたことに始まります。
長左衛門は樂家4代一入(いちにゅう)の最高弟子で、金沢郊外の大樋村にある田畑に良質な陶土を見出し仙叟好みの茶道具を焼成、鮮やかな飴釉の優れた作品を多く残しました。
樂家から餞別として譲られたと伝わる飴釉は「大樋釉」とも呼ばれ、この釉薬がたっぷりと厚くかけられた茶碗は「飴色の器に茶の緑が映える」と人気を博しました。
柿色から落ち葉色、暗褐色、と発色は豊富で、歴代の長左衛門が各々異なった釉色を持つのも大樋焼の特徴です。
昭和2(1927)年に九代の長男として石川県に生まれました。東京美術学校(現・東京藝術大学)工芸科を卒業し、昭和61(1986)年に十代を襲名。日展、日本陶磁協会賞、日本芸術院賞など数々の賞を受賞しています。
平成2(1990)年に大樋美術館を設立、日展顧問、日本芸術院会員を経て2011年には文化勲章を受章。2016年大樋陶冶斎を襲名し、更なる活躍が期待されるなか、2023年脳出血のため惜しまれながら95歳にて死去。
制作は茶器のみにとどまらず、2015年には北陸新幹線開業に合わせ、JR金沢駅構内に壁陶「日月の煌き」を制作するなど、各地に多くの陶壁をのこしたことでも知られています。
今回ご紹介した大樋長左衛門は茶の美意識を継ぐ大樋焼の十代であると同時に、三彩釉や青釉などの斬新な作品を発表するなど造形家としての顔がありました。
日本の陶芸界を牽引した才気あふれる作品づくりで知られる十代の作品をはじめ、いわの美術では貴重な歴代大樋長左衛門の作品の買取りを行っております。
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