大川薫は青森県を拠点に活躍したガラス作家です。
伝統的な吹きガラスやベネチアングラスの技法を巧みに操り、制作拠点の青森県津軽地方の自然をテーマにした作品や、茶室の空間に映える上品な玻璃茶道具を制作しました。
すでに物故作家となり、今後さらなる評価が期待される作家の一人です。
1940年に新潟県で生誕した大川薫は、武蔵野美術大学で工芸デザインを学び、卒業後に青森県へ移住しガラス会社・北洋硝子に入社します。
北洋硝子は1949年の創業から漁業用の浮玉作りで大きなシェアを握っていた会社で、丈夫で質が良いという製品の評判から、時代の主流がガラス製品から樹脂に移り変わっても生き残ってきました。
ガラス製品のもっとも原始的な製法である吹きガラスの「宙吹き」が浮玉製法を支え、浮玉の需要が低下してからはテーブルウェアや照明器具など生活製品へシフトしていきます。
また、職人の一人が会社近くの七里長浜の砂を混ぜたところ緑色に変化した偶然を発端に、色ガラスの調合にも研究を重ねます。
会社の技術力の高さと研究開発への真摯な姿勢は、大川薫の繊細な表現も生み出す土台となりました。
北洋硝子は1977年に自社ブランドの津軽びいどろを創始し、のちに青森県伝統工芸品の指定も受け、現在でも伝統工芸士と若い硝子職人が多数腕を振るっています。
このような風土のなか、大川薫は積極的に自分個人の作品も制作し、1980年から個展の開催や各地でもガラス展へ出品していきます。
吹きガラスを中心としながら、世界のガラス工芸の多様な技法を取り入れていき、ガラス工芸で有名なヴェネツィア・ムラーノ島のモザイク技法であるミッレフィオーリなどもアレンジし、独自のものへ昇華しています。
職人から作家へ進化した大川薫の活動は随所で評価され、1986年に青森芸術文化褒賞を受賞し、1990年には旭硝子主催の東北ガラスアート展第1部にて大賞を、翌年は同上第1回日本ガラスアート展にて旭硝子賞を受賞しました。
晩年には北洋硝子の顧問を勤め、60代に入ってからも制作と個展開催を続けていましたが、2008年に逝去されました。
大川薫は津軽地方の自然を作家ならではの感性で捉え、作品にも反映してきました。
大川薫工房として発表している作品には以下のシリーズがあります。
ねぶたまつり…祭りの熱気を表すような、赤の効いたカラフルな作品
津軽海峡…深いブルーをベースに波のうねりを感じさせるマーブルの渦が特徴
新緑・奥入瀬…雪解けの春、明るい陽の光に輝く新緑のグリーン
白神山・黄葉…白神山地のブナ林を一面覆う晩秋の黄色
十和田・紅葉…湖畔の明るい橙の紅葉、湖面の青が表現される作品もあります。
工房製の作品は花器・大皿などが多く、これらも魅力的ですが、個展で発表し蒐集家に販売されていた作品では、さらにバリエーションに富んだ作風が見られます。
水指や玻璃茶碗、茶入れ、香合、棗など茶道具を中心に、様々な技法が駆使され、より美術的価値の高い品物を多く残し、個展で発表されてきました。
お買取りにあたっては、共箱・共布・栞の有無が重要となります。揃ってお持ちの場合は、お買取り査定時に合わせてご用意ください。
また水指や棗など蓋物の作品は、牙蓋 木蓋などによっても評価が分かれ、作品の状態、付属品の欠けも評価を左右します。
いわの美術では美術品・骨董品を中心に幅広くお買取りを行っており、大川薫の作品も多数お買取り実績がございます。
LINE・メールにてお写真をお送り頂きますと、オンライン無料査定が可能になり、お買取りがスムーズに運びおすすめしております。
そのほか多数のお買取りご希望の場合は、無料出張買取も行っております、お電話にてご相談くださいませ。